
毎週日曜11時から13時まで、全国のコミュニティFM(一部地域を除く)を結んで放送している地域SDGs情報バラエティ『ロコラバ』。今回は2023年7月23日放送の『深堀り』のコーナーから、岡山県で新たな漁師の働き方を提唱する夫婦を紹介します。
瀬戸内海に面した岡山県玉野市胸上地域で、漁師の富永さんご夫婦が営む邦美丸(くにみまる)。ここでは、事前に顧客から注文が入った必要な魚だけを獲るシステム「完全受注漁」を実施しています。あまった魚は海にリリースし、豊かな海を守ることに貢献。さらに、操業時間の短縮や、消費者との直接取引による収入アップなどにも繋がり、“漁師の新たな働き方”として注目を浴びています。
今回は、邦美丸・代表の富永邦彦(とみなが・くにひこ)さん、代表補佐の富永美保(とみなが・みほ)さんご夫婦にお話を伺いました。
――邦彦さんは大阪府の出身。さまざまな職業に携わった後、結婚を機に岡山県で漁師を継ぐことを決意。過酷な労働環境で1度は辞めたものの再チャレンジし、働き方改革として、受注漁を始めました。一方、妻の美保さんは保育園の頃から獣医を目指していました。しかし、高校3年生の冬に重度の動物アレルギーを患い、断念。邦彦さんと出会い、現在に至ります。邦彦さんのご実家は、漁師を営んでいたのでしょうか。
いえ、嫁の実家が漁師家系なんです。
――美保さんのご実家の家業を継いだんですね。美保さん、ご両親が漁業を営む姿をずっと見てきたわけですが、どのように感じていたのでしょう?
美保さん 当時はまったく憧れず、正直なところ、漁師はしたくなかったですね(笑)
――そうだったんですね(笑)。事前に顧客から注文が入った必要な魚だけを獲るシステム「完全受注漁」は、どういったきっかけで始めたんですか?
邦彦さん 漁師になった当初は「儲かることが持続可能な漁業だ」と考え、市場と直販の二刀流をしていました。ただ、コロナをきっかけに一般の家庭からの注文が一気に増え、たくさん魚を捕る必要がでてきて。「今まで通りでいいのかな?」と疑問を持ち始めました。「必要な分の魚だけでいいんじゃないかな」と思えてきたんです。
――なるべくコストカットすることを選ばれたんですね。どのように受注漁を運用しているんですか。
美保さん Instagramから事前にお客様から注文を受け、それから船を出して必要な分だけ魚を捕るようにしています。余ったお魚は海にリリースして、水産資源を守っています。

富永邦彦さん、富永美保さん
――お客様からはどんな魚の注文が来るんですか。
美保さん 基本は漁師のおまかせボックスなんですけど、たとえば、「母の誕生日なのでタイを入れてください」「今回は鱧に挑戦してみたいです」といった、それぞれのご要望をいただくこともあります。
――自然が相手ですから、捕れない可能性もあると思いますが、そういった場合は?
邦彦さん 捕れなかった時は素直に「ごめんなさい」と伝えます。自然のものだから「必ず捕れる」はなく、食べ物を大切にしていただきたいという思いを伝えています。
――なるほど。捕れなかったとしても、自然のありがたさを実感してほしいということなんですね。そういった理解がある方が注文することはすごく大事ですね。現在は乱獲防止が問題になっていますが、やはり魚は減っているのでしょうか?
邦彦さん 漁師を始めて15年になりますが、以前捕れた魚が今は捕りづらくなってきました。現場にいて、 目で見て感じるぐらい実感します。たとえば、アナゴやシャコ。最近で言うとイカやタコもだんだん減ってきました。
――水産資源を守ることはもちろんのこと、労働環境も改善されたと伺いました。
美保さん 操業時間で言うと、半分になりました。私たちには子どもが3人いるんですが、上の子2人の子育てはほぼワンオペでした。今は受注漁に切り替えたことで、時間の無駄が省けるようになり、夫が子どもたちに絵本を読んだり、保育園の送り迎えに行ったりするようになりましたね。
――良いことばかりのように感じますが、実際のところ収入の方はいかがですか。
邦彦さん 価格を設定して販売できるので、逆に収入が安定しました。コストが下がるので、売り上げとしては上がっていますね。
美保さん 自分で販売するので、その日の水揚げを自分たちで管理できるんです。
――「これくらいの受注が入ったから、この金額でいこう」というように、計画が立てやすくなるということですね。今はどのくらいの時間を操業されているんですか?
邦彦さん だいたい早朝6時から午前12時までです。今までは朝の3時から夕方4時までかかっていました。
――12時間は長い! お客様へ魚を発送するときの準備には時間がどれくらいかかりますか?
邦彦さん 1、2時間ほどです。それを足しても、今までの働き方よりは短いんです。
――現在はご夫婦で船に乗っているのでしょうか。
邦彦さん 僕1人です。妻には魚をパッケージするのをお願いしています。

邦美丸の商品
――ちなみに、古くから漁業を営んでいる方とのお付き合いはいかがでしょう。新しいことに取り組むうえで、摩擦などはあるのかなと。
邦彦さん もともと組合長とはこの仕組みについて話していました。そういったルールがなかったので すぐに理解は得られなかったんですが、「一緒にルールを作っていきましょう」と話したら、協力的になってくれ、スムーズに話が進みました。
――すばらしい! 周りの皆さんとも連携されているのですね。今後の展開や課題について、どのように感じていらっしゃいますか。
邦彦さん 3つほどあるのですが、まず玉野市では、地魚を食べられる場所が意外と少ないんです。そこで、近隣の飲食店さんと協力して「地元の魚を食べる場所を作っていこう」と動き始めています。
また、受注量をもっと全国に広めて、地方から日本の漁業界を変えていきたいなと思っています。 そして、漁師という職業が人気になるように、これからも楽しくて夢のある仕事にしていきたいですね。
――最後に、リスナーの皆さんにメッセージをお願いします。
美保さん 受注漁は、労働時間を短縮して売り上げを維持する、新しい働き方です。もっと広めていきたいので、Instagramで「邦美丸」と検索いただき、ぜひフォローいただけるとうれしいです。
邦彦さん 漁師をもっと楽しい職業にしていきたいと思っています。「我こそは漁師に」という方は連絡ください!
――邦彦さん、美保さん、ありがとうございました!
***
(番組パーソナリティ 川久保)
漁業はなかなか大変だと聞きますが、お2人の活動は全国で悩みを抱える漁師にとって希望の光になるんじゃないかなと思いました。この船に乗りたくなりました!
(番組パーソナリティ 横田)
素敵なご夫婦でしたね。お話を聞いて、職業の難しい部分をちゃんと理解して、超えていこうとすることの大切さを感じました。
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文・構成=池田アユリ
編集 = ロコラバ編集部