ギターやベースの弦をリサイクルする活動「ミュージックドネーション」 NPO法人環境会議東北の環境と音楽への想い|宮城県仙台市

2023.3.19 | Author: 池田アユリ
ギターやベースの弦をリサイクルする活動「ミュージックドネーション」 NPO法人環境会議東北の環境と音楽への想い|宮城県仙台市

毎週日曜11時から13時まで、全国のコミュニティFM(一部地域を除く)を結んで放送している地域SDGs情報バラエティ『ロコラバ』。今回は1月29日放送の『地域人』のコーナーから、宮城県仙台市を中心に活動する、ギターやベースの弦のリサイクルからSDGsの活動を行う取り組みをご紹介します。

宮城県仙台市を中心に活動する、NPO法人「環境会議所東北」が展開中の「ミュージックドネーション」。主にニッケルやステンレス、スズ、銅、リンなどの素材からできているギターやベースの弦を、楽器店・ライブハウスなどで回収しています。

近い将来、枯渇することが懸念されている金属資源を有効活用しようというこちらの取り組み。“音楽しながら社会貢献”をテーマに、身近なところからSDGsを実践しています。

今回は「HOUND DOG」の初代ベーシストとして活躍し、現在は地元の仙台市でNPO法人「環境会議所東北」の理事として活動する、海藤節生(かいとう・せつお)さんにお話を伺いました。

 

交換した楽器の弦を捨てずにリサイクルする「ミュージックドネーション」

――海藤さんと言えば、HOUND DOGの初代ベーシストです。1984年にバンドを離れ、その後はライブハウスの経営に携わり、地元の仙台で環境保全に関する活動を展開しています。2008年には持続可能な地域づくりを行うNPO法人「水守の郷七ヶ宿」を設立し、2022年にNPO法人「環境会議所東北」の理事に就任されました。海藤さん、「ミュージックドネーション」というアイデアが生まれたきっかけを教えていただけますか?

以前から私は交換した楽器の弦を取っておき、鉄くず類は古物商へ持っていくようにしていました。ふと「みんなはどうしているのかな?」と思い、Facebookでつぶやいてみたところ、「ためている」「燃えないゴミで出している」などとメッセージが届いたんです。「回収するって言ったら、持ってくる?」と投げかけたら、「ぜひ!」という声が集まりました。

回収ボックス(画像提供:NPO法人環境会議東北)

そこで、音響関係の方やミュージシャンなど計5人を集めて委員会を作りました。それぞれのネットワークを使ってライブハウスや楽器の修理屋、軽音学部のある高校など、宮城県内で約46か所に回収ボックスを置いてもらうことになりました。


――回収した後はどうなりますか。

最初はアコースティックギターがワンセットで約20gとして、その中の10分の1が銅なら1g1円なので、そのお金で社会貢献しようと考えました。ただ、当時は安易に考えすぎていて、弦には金色や銀色とさまざまな種類があり、アルミ缶のように簡単に区別できなかったんです。そこでまずはちゃんと分別をして、 業者さんに値段交渉をして換金するようになりました。

お金に換えてしまえばそれまでですけど、私はみんなの思いで集まったものを、ミュージシャンとして「良いこと」に使いたいと思うんです。今はSDGsの観点でメンバーや回収ボックスの人たちと相談しながらどう活かすかを考えています。普通はゴールを決めて行うのでしょうけど、それだとつまんないというか。

分別された様子(画像提供:NPO法人環境会議東北)

 

――走りながら考えるんですね。

そう。アドリブですね(笑)。


広がるSDGsの輪

――佐賀県でも回収ボックスを置いてくださる方もいらっしゃると聞きました。

はい。いろんな方がラジオなどで紹介してくださり、全国から問い合わせをいただきました。「さすがに県外まで回収に行けない」と悩んでいたところ、現地の方の提案により、こちらからチラシやステッカーなどを送り、それを広報用に使ってもらいながら置いてもらうという形で対応いただいています。

――ミュージシャンの方も賛同しているそうですね。

そうなんです。ミュージシャンはもっぱら楽器を弾いたり、歌でメッセージを出したりするだけで、分別やゴミ拾いなどの取り組みをしているイメージってないですよね。でも、こうやって環境に対して行動できるということで、たくさんの賛同者が集まってくれました。ミュージシャンだけでなく、さまざまな分野で活躍している方がそれぞれ考えていけば、もっと良い環境が作られていくと思います。


自然と共存する「山学校」

――現在は、もう1つのNPO法人「水守の郷七ヶ宿」の本拠地にいらっしゃるそうですね。

はい。私は普段、サスティナブルや教育に関する活動を行っています。「ESD(Education for Sustainable Development)」というものがあります。持続可能な開発のために「どういう風に暮らせばいいのだろう?」、「どういう社会になればいいのだろう?」ということを学び合う教育活動です。

その学会に参加しながら、子どもたちとESDに取り組む「山学校」を行っています。今の子どもたちは近くに森があっても、森とすごく距離感があるんですね。そこで、森の中に入って焚き火をするなどを行うと、子どもたちは「あったかい」ということを味わい、ぐっと身近に感じます。山学校では、体験から学んでもらうことを大切にしています。

――子どもの頃から自然と共存するのを学ぶって、いいですね。

そうですね。東日本大震災を例にすると、寒い時期だったので、僕は現地へ薪を持って行ったり、使われなくなった家屋の一部をチェーンソーで切って火を起こして炊き出しに使ったりしました。子どもたちにはただ見ているだけでなく、いろんなことに関心を持ってもらいたいですね。

――最後に、リスナーにメッセージをお願いします。

物と時間を大切にしましょう! 

***

(番組パーソナリティ 横田さんコメント)
海藤さんは、行動することを恐れないための下地を作ってくださる方なんだなと、この取り組みから感じました。

(番組パーソナリティ川久保さんコメント)
子どもたちに何を提示してあげられるのかが問われているなと思いました。僕もギターの弦をパッと捨てないでちゃんと貯めて送ろうと思います。

 

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文・構成= 池田アユリ
編集 = ロコラバ編集部

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