毎週日曜11時から13時まで、全国のコミュニティFM(一部地域を除く)を結んで放送している地域SDGs情報バラエティ『ロコラバ』。今回は7月2日放送の『地域人』のコーナーから、竹で家を建築するプロジェクトを紹介します。
日本最大級の建築設計大手「日建グループ」において、集合住宅を専門とする株式会社日建ハウジングシステムは、持続可能性を追求した高品質な住宅設計を提供する企業です。
2016年からは、竹を地域資源とする鹿児島県薩摩川内市とタッグを組み、『竹でイエを建てちゃおう!プロジェクト』を推進。落語家の月亭方正さんを応援隊長に迎え、建築業界に留まらず、幅広い世代にも“竹の実力”をアピールしてきました。
そして今年3月にはその研究が実を結び、集成材にすることで強度を上げ、竹を構造材として活用し、建物を建てることを実現可能としました。今後も、竹を建築に利活用することを推進し、森林保全、地方創生、雇用創出など、様々な問題の解決を目指しています。
今回は、株式会社日建ハウジングシステム 大阪代表 理事 lid研究所I3デザイン室 室長の古山明義(ふるやま・あきよし)さんにお話を伺いました。
――古山さんは愛知県生まれ、兵庫県育ちです。1998年に武蔵工業大学大学院修了後、日建ハウジングシステムに入社。建築意匠設計を専門とした一級建築士です。入社以来、大規模な超高層を中心とした分譲集合住宅、マンション建て替えプロジェクト、企業社宅などさまざまなタイプの集合住宅の設計を担当。 2010年に渡鹿(とろく)社宅にて「くまもと景観賞」、2019年にはローレルコート上本町石ヶ辻公園にて「グッドデザイン賞」受賞されています。古山さんが室長を務めているlid研究所とは、どんなところなんでしょう?
「Life innovative design(ライフ・イノベイティブ・デザイン)」という言葉の略です。「L3(エルキューブ)」「I3(アイキューブ)」「D3(ディーキューブ)」という3つのデザイン室で構成されています。
弊社は1970年に日建設計から都市型集合住宅を専門領域として分社独立をして、53年間集合住宅の設計や監理を行ってきました。近年では人口の減少や少子高齢化問題、 地球温暖化など、あらゆる課題に直面しており、人々の暮らしがその変化に対応するよう研究所を立ち上げ、さまざまなサービスを行っています。
――『竹でイエを建てちゃおう!プロジェクト』が発足した背景を教えてください。
戦後、日本では多くの竹が植えられ、日用品や家具、建築材料として利用されてきました。ただ、最近では海外から輸入される安価な竹であったり、安価で加工しやすいプラスチックに置き換わったりすることで、国内で竹の需要が減少しています。
その結果として、放置された竹林が山を浸食し、森林の荒廃や獣害の発生などの「放置竹林問題」が全国に広がっています。 そこで、鹿児島県の薩摩川内市と連携してこのプロジェクトを実施することになったんです。
薩摩川内市は、地域資源であり、地域課題である竹の活用を総合的に進めていて、付加価値の高い産業の育成と雇用を実現させています。「より竹を使っていこう!」と、共同して進めています。
――竹って、実はとても強いんですよね。全国各地でものすごく増えていて、家の床を突き破ることもあると聞きました。
そうですね。成長も早いですし、強度もあります。
――実際に竹を建築資材として活用するために、どういった研究をされたんですか。
竹の強度は、杉やヒノキのような木材に比べても非常に強いです。また、通常の木材は1度伐採してしまうと、次のものが成長して材料として使えるまでに40年から60年ぐらいかかります。ただ、竹は成長が早く、3年から5年で材料として使えるんです。
――そんなに早いんですか!?
そうなんです。それと、竹はイネ科の植物で木ではないんです。
――草に分類されるんですね。
なので、JISやJASなどの規定がされておらず、今の日本の法律では、そのまま建築の構造材として利用することができないんです。
――日本の家屋では飾りとしては使われているのを見かけますが、家の柱などには使えないということなんですね。
でも、強度があるので「なんとか使いたい」という思いがありました。そこで、弊社で架空のモデルプロジェクトを作ったんです。それぞれの部材や接合部の強度の実験を続け、その結果を審査機関に持っていきました。そこで「個別のプロジェクト」に対する、性能評価を取得できました。今年の3月に、竹を構造材として建築物を作れることになったんです。
――これから、竹の家を建てられますね。今後の課題や展望はいかがでしょう。
コストの問題があります。竹を活用するには、現時点では非常にお金がかかります。竹自体が高いというよりは、竹の需要が減ったことで、各地域で竹を扱う人が減っているからなんですね。
竹を切るためだけに、人に動いてもらうのも大変です。また、竹を加工する場所もだいぶ限られていますし、そのまま運んでしまうと空気を運んでいるようなもので、やはりコストがかかってしまいます。
それぞれの地域で地産地消的に竹の活用が増えれば、当然コストも下がるんじゃないかなという思いで、この取り組みを進めています。
――SDGsの観点で、新国立競技場などたくさんの木材を使うプロジェクトがありますよね。竹で家を建てられたら、いずれはもっと大きいものを作るなどの構想はあるのでしょうか。
論理的には可能だと思います。まだ実際に建物が立っていないので、まずは1つ、世の中に実現させ、さらに進めていければと思います。
――最後に、リスナーの皆さんにメッセージをお願いします。
ロコラバさんの番組の告知ページに、弊社のコーポレートサイトとInstagramのリンクを貼っていただいているので、ぜひ見ていただければと思います。また、公式YouTubeチャンネルでは、今回のモデルプロジェクトを動画で公開しています。「竹集成材構造の建物を作ってみたいな」と思われる方がいましたら、弊社までお問い合わせいただけると嬉しいです。
――いい形で広がっていくといいですね。古山さん、ありがとうございました!
***
(番組パーソナリティ 横田)
プロジェクトで架空のものからシミュレーションして実際に検定を受けるというのは、大企業だからこそできる規模の実験だなと思いました。それを積極的に取り組んでくれる企業があることが嬉しいですね。
(番組パーソナリティ 川久保)
僕の近所にも手つかずの竹林があります。こういった活動で竹がうまく利用されていくと本当にいいなって思いました。
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文・構成=池田アユリ
編集 = ロコラバ編集部