毎週日曜11時から13時まで、全国のコミュニティFM(一部地域を除く)を結んで放送している地域SDGs情報バラエティ『ロコラバ』。今回は1月15日放送の『地域人』のコーナーから、「トキの人工繁殖・飼育と野生復帰」に関する取り組みをご紹介します。
ピンク色の大きな羽根を広げて飛ぶ姿が美しい鳥「トキ」。かつては日本全土に生息したものの、自然環境の変化により、その数は激減しました。 1952年に「特別天然記念物」、1960年には「国際保護鳥」に指定されましたが、その頃には20羽前後まで減少。80年代、新潟県佐渡市では野生で生息していたトキを捕獲し、中国の協力を得ながら、人工繁殖に成功します。2008年から野生復帰させるため、放鳥を開始しました。
今回は、絶滅の危機に追い込まれたトキの繁殖に成功し、今では自然に飛んでいる姿が見られるようになった町、佐渡市の取組みについて、佐渡市役所 農林水産部 農業政策課 トキ・里山振興係 主任の土屋智起(つちや・ともき)さんにお話を伺いました。
――土屋さんは佐渡出身。子どもの頃からトキに興味を持っていたそうですね。
佐渡市役所でトキの野生復帰の取り組みを8年ほど行っています。物心ついた頃から、私にとっては身近な鳥で当たり前の存在でした。
――どんな鳥なのか教えてください。
くちばしから尾羽までが約75センチの大きさで、翼を広げると140センチぐらいです。小学生が両手を広げたのと同じぐらいの幅がある大型の鳥です。昼間は主に田んぼやその周辺でドジョウやカエル、ミミズや昆虫を食べ、夜には林の木の枝にとまって過ごします。
――かつては日本全土にいたんですか?
北海道から九州、沖縄の方までたくさんいたという記録が残っています。
――自然環境の変化や人が乱獲し、激減したという話を聞きました。
明治時代に、「トキ色」と呼ばれるきれいな色をしたトキの羽を取るために、かなり鉄砲で打たれたそうです。それを使って羽ぼうきや羽飾りを作っていたようです。その後、約50年の間で絶滅の危機に陥りました。
――佐渡に野生種が残っていたのは、島だったからですか。
そうですね。島で天敵となる動物が少なかったことや、山の中の田んぼで餌を取る環境が残されていたことがトキにとって重要だったと思います。
――人の手が入ることになった経緯を教えていただけますか?
最初は野生でトキを増やそうと努力しましたが、環境の悪化がどんどん進み、数を増やすことができず、もう野生では難しいだろうということになり、人工的に数を増やすことになったんです。
――中国からトキを入れて繁殖させたそうですね。
佐渡で捕獲したのと同じ年に、中国で再発見されたんです。そこで中国のトキの中からペアを譲っていただいて、そこから人工繁殖に成功しました。
――徐々に数を増やしていき、今は野生に戻しているそうですが、大変な道のりでしたか?
そうですね。一度は失われたトキが生息できる環境を取り戻すということで、たくさんの方が頑張ってこられたので、その努力が実ったという風に考えています。
――トキの名前をあしらったお米もあると聞きました。
はい。トキの餌となる小さな生き物を増やすために、佐渡の田んぼでは農薬と化学肥料の使う量を基準の半分以下にしています。田んぼに水を使わない時期にも水が溜まるようにして、トキが餌として食べる生き物が減らないように工夫もしているんです。このような生き物が豊富な環境で作られたお米を、「トキと暮らす郷」と名付けて販売しています。
――人の手によって飼われていたトキは、野生に返すと自分で餌を取りに行くのは難しいのかなと思いますがいかがでしょう。
放鳥する前に自然に還すための訓練をしています。餌を自分で探して取ったり、広いところを飛び回って筋肉をつけたり。人間が近づいてきても、極度に怖がらないように人に慣れさせています。現在も、毎年30羽ほどを野生に放しています。
――毎年30羽だったら、町で遭遇するチャンスが増えますね。
佐渡では身近に見られるようになりました。順調に数が増えていますが、安定的にトキの数を維持するためには、佐渡だけでは広さが足りません。トキが住める環境を全国に広げていくことが課題です。
――(トキを放す)候補地は決まっているんですか?
将来的にトキを放すための候補地として、石川県の能登地域や島根県の出雲市の2か所が選ばれました。また、住みつけるような場所として、秋田県と宮城県、栃木県や千葉県など、広い範囲の地域で環境整備をしていくことになっています。
――最後に、リスナーに一言お願いします。
トキが住みやすい環境というのは、人間や他の生き物にとっても居心地のいい環境だと思います。佐渡以外でも自然環境を取り戻すための準備が進んでいますので、ぜひ応援していただきたいと思います。
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(番組パーソナリティ 横田さんコメント)
「人の手が加わることによって数を増やす実例は、生物学上の歴史でも珍しいですし、名に残ることだと思います。この伝統を他の生物にも適用できたらいいと思いました。」
(番組パーソナリティ 川久保さんコメント)
「トキの学名は『ニッポニアニッポン』というんですよね。1852年にライヘンバッハという人が命名し、『これは日本の鳥だ!』と思って名付けたことが由来らしいです。復活してくれると、日本人として嬉しいですね。」
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文・構成 = 池田アユリ
編集 = ロコラバ編集部