毎週日曜11時から13時まで、全国のコミュニティFM(一部地域を除く)を結んで放送している地域SDGs情報バラエティ『ロコラバ』。今回は2月19日放送の『地域人』のコーナーから、高知県からフィッシュレザーを作る、環境に優しいお店の取り組みをご紹介します。
魚の皮をなめした“フィッシュレザー”。本来、資源として活用されていなかった魚の皮を活用し、植物タンニンを用いた自然由来の伝統的製法にこだわった、環境に優しい革製品です。また、魚の種類によって異なるウロコ模様が特徴的で、天然素材ならではの質感や色合いを楽しむことができます。今回は、フィッシュレザーで作られた革小物を販売する「Ocean Leather(オーシャンレザー)」代表の高橋大海(たかはし・ひろみ)さんにお話を伺いました。
――高知県出身の高橋さんのプロフィールは、とてもユニークです。 高校を1カ月で辞め、水産加工の仕事に就いた後、関西外国語大学に進学。大学在学中にアメリカのカリフォルニア州にある大学に留学。帰国後、就職活動中にフィッシュレザー事業を立ち上げ、大学卒業後、 地元である高知県で、『海をその手に』をコンセプトにフィッシュレザーを使った革小物の製造・販売を行っています。週7で行くほどの「釣り好き」の高橋さん、まずはフィッシュレザーを作る経緯を教えていただけますか?
高校を辞めた後、水産加工の仕事をしていたんですが、「魚って、ゴミになってしまう部分が多いんだな」と感じたんです。
――魚は内臓や骨など、取り除くものがたくさん出てきますもんね。
そうなんです。例えば、1匹の魚を刺身にするのに、約60~70パーセントは捨ててしまいます。「廃棄されてしまう部分が多すぎる。なんとかならないかな……」と思っていたんですが、当時は何も思いつきませんでした。
その後、大学に進学したんですが、コロナ禍で開講される授業も少なく、週7日くらい釣りに行っていました。ある日、魚をさばいていたとき、ふと、「魚の皮で財布を作れないかな」と思いついたんです。
――今まで魚の皮を使ったものは、前例がなかったと聞きました。どのように行っていたのでしょう。
最初は失敗続きでした。たまにきれいなものができるんですが、なぜなのかはわからない。そのため、わざと失敗して、どうやったら失敗し、成功するのかを探っていきました。常にいいものができるように実験していく感じでしたね。
――実際に製品を作る工程を教えていただけますか。
まず、臭いを取り除く作業を行います。魚の身を皮からすべて取った後、皮の中の脂分を抜きます。脂分をそのままにしとくと、魚くさい臭いが残ってしまうからです。約1週間で臭いは取れます。
――「脂分を抜く」というのは、薬剤を使うんですか。
そうです。そのまま乾燥させると腐ってしまうので、植物の木の皮を含んだ薬剤を使って防腐処理、いわゆる「なめし」を施します。そこから色をつけ、乾かして完成です。
――製品としての強度はいかがですか。
強度は、意外と強いんです。魚の種類はブリやタイ、マグロを使っています。
――たしかに、マグロの皮は硬いイメージがあります。どんな商品がありますか。
長財布や2つ折り財布、ペンケースやキーホルダー、名刺入れなど、いろんな種類の商品を作っています。
――魚の種類によって模様が違うので、いろんな柄が楽しめますね。
ブリは細かく、タイはいわゆる魚っぽい模様です。サーモンはちょっと蛇っぽいイメージですね。
――フィッシュレザーは新しい産業ですし、環境に対してもメリットがありそうです。
まだまだ魚の皮を使って製品を作る会社は少ないので、高知県の新しい産業として取り組んでいきたいです。廃棄されるものを使うので、環境にも優しいです。今後は海外にも展開していきたいですね。
――不要なものを材料として漁業関係者から買っていることになるわけですね。
そうですね。水産加工の経営者や漁師たちから皮を買い取っています。
――さまざまな方面でWin-Winな関係が垣間見えますね。現在は、何人で仕事をされているんですか。
僕も合わせて4人体制で行っています。
――4人だけで大変な過程を行っているなんてすごい! それでは最後に、リスナーの皆さんへメッセージをお願いします。
マニアックな魚の革の製品ですが、1度手に取っていただければ、良さがわかっていただけると思います。公式ウェブサイトなどでぜひ覗いてみてください。
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(番組パーソナリティー 横田さんコメント)
「失敗する要因を比べる」というのはとても大事なことですよね。そういうところからきちんとされている高橋さんはすごいなと思いました。ぜひ今後も注目していきたいですね。
文・構成 = 池田アユリ
編集 = ロコラバ編集部