東京で“音威子府そば”が食べられる「音威子府TOKYO」で「常盤軒」のそばを期間限定復刻

2022.4.19 | Author: 天谷窓大
東京で“音威子府そば”が食べられる「音威子府TOKYO」で「常盤軒」のそばを期間限定復刻

全国のコミュニティFMをネットしてお送りするラジオ番組『ロコラバ』。12時台にお送りしている「東京ロコラバ・ランチ」では、全国各地のご当地グルメが集まる東京で味わえる名店をご紹介しています。

 

今回は、北海道・音威子府(おといねっぷ)村の「音威子府そば」を東京で味わえる四谷のお店、「音威子府TOKYO」をご紹介します。

「北海道で一番小さな村」音威子府村で作付面積の約90%を占めるそば

北海道の北部に位置する音威子府(おといねっぷ)村は、人口約700人ほどの小さい村。村の名前は、「濁りたる泥川、流木が積み上がる川口、切れ曲がる川尻」を意味するアイヌ語「オトイネㇷ゚」から来ています。

村の85%を森林が占めており、豊富な資源を使った林業が盛ん。ものづくりの名門校として知られる「北海道おといねっぷ美術工芸高校」には全国から生徒が集まり、村の人口のじつに15%をこの高校の生徒と教職員が占めています。

そんな音威子府村の名産が、そば。作付面積はおよそ870haにも及び、村内の畑の約9割を占める一大作物となっています。

 

地元名産の蕎麦を殻ごと挽いて作る“黒い蕎麦”

そば殻ごと挽くため、乾麺(と言っても一般的な乾麺ではなく半生)の状態でも麺は黒っぽい色をしている 製造は畑山製麵で2022年8月末で廃業するそう、この味も失われてしまうのか…

音威子府そばの大きな特徴は、蕎麦を黒い殻ごとひいて作られた麺。まるでイカスミやコーヒーを思わせるような、マット感のある黒さがひときわ目をひきます。

茹でた直後の音威子府そば。水気による艶で黒さがさらに際立つ

殻ごと粉にすると食感がザラつきそうですが、地元の製麺所「畠山製麺」が作る音威子府そばの麺は秘密の技術を使い、丁寧に挽くことでなめらかさを実現。食べ応えのある弾力との両立を実現しています。

アルデンテのようなコシのあるそばを口に入れて噛みしめること数回。鼻先からそばの芳醇な香りが吹き抜けていきます。その後、飲み込むと、なめらかなのどごしとともに、蕎麦本来の旨みがじんわり。「蕎麦って、こんなに“風味”のある食べ物だったんだ!」とビックリしてしまいます。

 

鉄道ファン憧れ“日本一うまい駅そば”だった音威子府駅「常盤軒」の味を再現

音威子府の駅そば『常盤軒』のかき揚げそばを2022年4月末までの期間限定で復刻、週末のみ提供している

かつては、オホーツク海側を経由して稚内へ向かう「JR天北線(てんぽくせん)」(1989年廃線)と宗谷本線が分岐する交通の要所であり、鉄道ファンには有名な場所であった音威子府駅。この構内で営業されていたそば店「常盤軒(ときわけん)」で提供されていたそばは、その見た目と味のインパクトから、「日本一うまい駅そば」として語り継がれる存在でした。

しかし、長らく店を切り盛りしてきたご主人が逝去したことにより、2021年2月に「常盤軒」は惜しまれながら閉店。「音威子府TOKYO」開店の背景には、多くの旅人にとって憧れであった味を残したいという思いが込められていました。

そんな思いを感じさせる一品が、週末限定(2022年4月末までの期間限定)で提供されている「かき揚げそば」。和菓子のごとくふんわりとした衣は、口に入れるとサッと溶ける繊細な味。「常盤軒」時代のレシピを忠実に再現しており、かつて駅を訪れたことのあるお客さんからは「まさにこの味! 懐かしい!」と感激の声があがるそうです。

音威子府名物の常盤軒“かき揚げそば”のかき揚げは音威子府よりやや南に位置する名寄の豊岡製麺所で作られている

 

キャリア20年のそば職人をうならせた音威子府そば。麺は音威子府村から毎週空輸

音威子府TOKYO 店主の鈴木章一郎さん

「音威子府TOKYO」店主を務める鈴木章一郎さんは、そば職人として20年以上のキャリアを持つ大ベテラン。立ちそばファンの間で名店として知られる「つぼみ家」など、数々のそば店に携わってきましたが、あるお客さんからの“お土産”をきっかけに音威子府そばと出会い、その味に大きな衝撃を受けたといいます。

「とにかく、そばの黒さが衝撃的でしたね。実際に食べてみたら、コシが強くて、食べたあと鼻に抜けるフレーバーもすばらしい。なんだこれは、とても面白そうだ、と衝撃を受けた記憶があります」と店主の鈴木さんは当時を振り返る。

すっかり音威子府そばのとりこになった鈴木さんは、「この味をぜひ東京でも食べてもらいたい」と、音威子府村まで出向き、直談判。地元の製麺所「畠山製麺」で作られた麺を、毎週数回、北海道から東京まで空輸することで、“音威子府の味”をそのまま提供することが叶いました。

地元の「畠山製麺」が作る音威子府そば

「音威子府の水や空気が作り出す、唯一無二の味をお届けしたいと考えました。そば粉を仕入れてこちらで製麺する方が楽といえば楽ですが、それよりも「音威子府で食べられている味」そのものを味わっていただくことが大切だと思っています」

濃厚な風味の奥に見えるのは、豊かな自然にかこまれた、音威子府の景色。かつて足を運んだ人には懐かしい思い出を脳裏に呼び起こしてもらい、まだ訪れたことがないという人には、その景色を実際に味わいに音威子府を訪れるきっかけとなってほしいと語る鈴木さんでした。

 

■音威子府(おといねっぷ)TOKYO 
東京都新宿区舟町3-6今塚ビル1F
営業時間:11:30-14:00/17:00-21:00
定休日:月曜・祝日
2名以上の来店は要予約
電話番号:03-6457-7590

文・取材 = 天谷窓大
撮影・企画・編集 = ロコラバ編集部(株式会社トランジットデザイン)

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