毎週日曜11時から13時まで、全国のコミュニティFM(一部地域を除く)を結んで放送している地域SDGs情報バラエティ『ロコラバ』。今回は5月14日放送の『地域人』のコーナーから、東京・多摩地域の「竹」を活用した取り組みをご紹介します。
古くから人々の生活になじみ深い身近な資源「竹」は、“サステナブルな木材”として世界的に見直されつつあります。
東京造形大学 准教授の岩瀬大地さんがインドネシアで竹を使った自転車に出会ったことを機に、同大学の学生たちと共に活動をはじめたのが「スペダギ東京」。
林業や農業が盛んな東京・多摩地域の資源を活用して、子供用の竹自転車を作り、子供たちを巻き込んだまちづくりに貢献。地域資源を見直すことで、新たな価値を創造する“サステナブルデザイン“を展開中です。
今回は、一般社団法人スペダギジャパンの理事を務める、東京造形大学 准教授・岩瀬大地(いわせ・だいち)さんにお話しを伺いました。
――東南アジアを中心に「サステナブルデザイン」について研究されている岩瀬さん。 地域資源を活用した様々なサステナブルな「モノ・コトづくりプロジェクト」を行っています。岩瀬さん、この取り組みを始めたきっかけは?
2013年にインドネシアを訪れ、友人のシンギー・カルトノというデザイナーが、自分の村にある竹で作った自転車を見せてくれたことが始まりでした。
竹で自転車を作って終わりではなく、自分の村の活性化を目指して竹自転車を使った「グリーンツーリズム(農山漁村に滞在しながらそこでの体験を楽しみ、地域の人々との交流を図ること)」にも取り組んでいるのも素晴らしいなって思いました。
インドネシアの農村に行くとあまり産業がないため、多くの若い人は都市部に働きに行ってしまうんです。 村の将来の担い手やイノベーションを起こす人材が少なく、農村部はますます発展から取り残されています。
日本の場合も少子高齢化で人口が減っていて、インドネシアと似たような状況にあると思います。日本にも竹や木材などの自然素材がありますので、地域のこういった資源を活かせば、地域の新しい経済活動や課題解決になるんじゃないかなと思って、仲間と一緒に始めたんです。
――竹でできた自転車とは、どういったものなのでしょうか?
私たちが作っている竹自転車はペダルのない幼児用のものになります。足で地面を蹴るストライダーをイメージしていただくといいかもしれません。私たちは「バンブーランバイク」と呼んでいます。
竹だけでできているのではなく、東京の活動拠点がある 東京多摩地域の針葉樹のスギやヒノキ、イチョウなども使っています。広葉樹の山桜やケヤキ、栗なども使用しています。作りとしては、S字に曲げた竹とこれらの木材のフレームを組み上げています。
――形にするまで、大変な道のりだったんじゃないですか。
まだ開発中の段階ではあるんですが、1番苦労したことは資金づくりでした。試作機を作ったり耐久試験をしたりなど開発のためのお金を確保することは今でも大変な点ですね。また、自然素材を使っているので、品質の安定性、耐久性をいかに確実にしていくかというところが非常に悩ましいところでした。
――たしかに、走っている途中で折れたら大変なことになっちゃいますもんね。でも、自転車のフレームが竹であるというメリットもありそうですね。
そうですね。振動吸収性が良く、乗りやすいという機能的な側面があります。見た目のエコっぽさ、自然の美学的な側面も利点だと思います。地域にある再生可能な自然素材を使えば、ランバイクも「買うのではなくて、作れるんだ」という発見を感じていただける、教育的な側面も大きな利点だと感じています。
――夏休みの工作で、「竹で自転車を作ってみよう!」なんていうのも、おもしろいかもしれないですね。
都内で試乗体験、竹林での公園づくりも!
――活動を広めるために、子どもたちに試乗してもらっていると聞きました。
実際に体験してもらうのが一番いいだろうということで、都内で定期的に開催されているイベントにいくつか参加しています。
――どんな反応をいただきますか?
子どもたちは黙々とこう楽しそうに遊んでいますね(笑)。保護者さんからの反応としては、「初めて見た」「竹でできているの?」」と言った驚きの声をいただきます。
――今後の展望をお聞かせいただけますか?
バンブーランバイクは、まだ市販するまでに至っていません。販売するにはさまざまなハードルがあるんです。ただ、誰かに買ってもらうためではなく、地域の課題に繋げていくことから始まった活動です。販売を目指すのではなくて、都市部の子どもたちに多摩地域に来てもらい、地域の放置竹林の手入れをしに来てもらうなかで、 自らの手で材料作りから組み立てまでするような仕組みができたらと考えています。
――商品だけじゃなく、その過程も含めた交流ということですね。ちなみに、自転車以外に竹で作ってみたいものはありますか?
竹林のエリアに公園を作る計画を考えています。林の整備をしながら、竹を使ったブランコやシーソーを設置した公園を作りたいなと思っています。
――最後に、リスナーの皆さんへメッセージをお願いします。
昨年、『竹自転車とサステナビリティ』という本を出版させていただきました。世界中で行われている竹自転車の取り組みについてまとめた書籍になりますので、ご関心のある方はぜひ参考にしていただければ幸いです。
――近所で竹自転車が見られる日が楽しみです。岩瀬さん、ありがとうございました!
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(番組パーソナリティー 川久保)
日本では、昔から弓矢の技術から釣り竿まで竹が活躍していますよね。釣り竿の技術は世界的にも評価を受けています。日本と竹というのは深い関わりがあるんですよね。
(番組パーソナリティー 横田)
繋がりをこれからも大事にしていくという、素敵な取り組みですね。 体験もセットで伝えたいというお話もいいなぁと思いました!
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文・構成 池田アユリ