いかつく見えて実は繊細! 東京で「徳島ラーメン」を味わう|早稲田「うだつ食堂」

2022.7.6 | Author: 天谷窓大
いかつく見えて実は繊細! 東京で「徳島ラーメン」を味わう|早稲田「うだつ食堂」

全国のコミュニティFMをネットしてお送りするラジオ番組『ロコラバ』。12時台にお送りしている「東京ロコラバ・ランチ」では、「東京で“ふるさと”をいただく」をテーマに、全国各地のご当地グルメが集まる東京で味わえる“ふるさと”をご紹介しています。

 

今回は、東京・早稲田にある「うだつ食堂」で、徳島県のご当地グルメ「徳島ラーメン」を体験。ふるさとメシでありながら、ラーメン激戦区である早稲田で20年以上にわたって愛され続ける味の秘密を探りました。

日本ハム発祥の地で育まれた徳島ラーメン

徳島ラーメンは、徳島県内で食べられているご当地ラーメン。とんこつ醤油のスープに乗った甘辛い豚バラ肉と細麺が特徴です。 昭和20年代、大手食品メーカー・日本ハムの前身である「徳島ハム」の工場があり、副産物のとんこつが安価で大量に手に入ったことから広まりました。

同じとんこつスープをベースにしつつ、足される醤油ダレの種類によって「白・茶・黄」と3系統の味が存在するのも面白いところ。「白系」は薄口醤油や白醤油タレを用いた、博多とんこつに近い真っ白なスープですが、「茶系」は濃い口醤油やたまり醤油を使用し、濃い茶色のスープが特徴。さらに「黄系」はスープのベースに鶏ガラも加え、薄口醤油で仕上げることで淡い黄色を帯びたスープとなっています。

豚バラはたんなる具材としてのみならず、スープに旨味をしみ出させることで、味に深みを与える効果も。徳島ではごはんと一緒に食べるのがポピュラーとされており、麺が細いのも、ごはんとかち合わないための“工夫”だといいます。

 

ラーメン激戦区・早稲田で20年以上愛される老舗

東京メトロ東西線「早稲田」駅から歩くこと10分。大隈重信像でおなじみの早稲田大学・早稲田キャンパスを見渡す新目白通り沿いにあるのが「うだつ食堂」です。お店を運営する会社の社長が徳島出身という縁があり、「地元のラーメンを東京に広めたい!」との思いから店舗を創業。ラーメン激戦区と呼ばれる早稲田の地において、20年以上にわたって営業を続けています。

「うだつ食堂」が提供する徳島ラーメンは、「あえて言うなら『黄系』」と、店長の小林将人さん。甘辛く煮込んだ豚バラ肉のチャーシューにトッピングの生卵をからめていただくスタイルは、「すき焼きラーメン」とも呼ばれ、親しまれているそう。

「まかないとしても食べていますが、いつもご飯3杯はいっちゃいます」(小林さん)

ラーメンの味を決める醤油ダレには、自家製の甘辛い醤油ダレと、豚バラチャーシューを煮込んで旨味がたっぷり溶け込んだ醤油ダレをブレンドして使用。詳しい調合は「企業秘密」とのことですが、「あえて言うなら、ベースとなるカエシの濃度を調整して、他のカエシと馴染みやすくするのがコツ」。それによって徳島ラーメンらしさが出るといいます。

「脂身の絶妙な食感が残るよう、豚バラを煮込むタイミングにも細心の注意を払っています。熟練してくると、チャーシューをつかむトングが自分の手先のような感覚になって、少し触っただけでもわかるようになるんです」(小林さん)

 

ガッツリストロングな見た目、でも意外と繊細?

肉玉中華そば(並・大ともに税込1,000円)とライス(税込100円、おかわり自由)

今回いただいたのは、お店の看板メニュー「肉玉中華そば」。100円でおかわり自由のライスもしっかりセットでいただきます。

濃い茶色の豚骨醤油スープに、さらに醤油で甘辛く炒めた豚バラが乗っかり、見た目は一面茶色。なんともストロングな雰囲気の見た目です。これはご飯が進みそうです。

しっかり卵を絡めます。この感じ、本当にすき焼きみたい! いったいこのラーメン一杯で、ご飯を何杯楽しめるのか……。

と、思って箸を進めてびっくり。意外にもその味は優しく繊細です。

スープはしっかり醤油とんこつのコクを感じるのですが、ノドがかわくほどに塩辛いわけではありません。むしろ豚バラから溶け出した脂や野菜を思わせる甘みも加わって、いろんな味が丁寧に優しく折り重なった雰囲気を感じます。

強面の人が実はとても優しかったような、不思議なギャップ。これはますます気になってしまう……。

加水を抑えて作られた細麺は、しっかり麺としての食べ応えもありつつ、ひとすすりするごとにスープも一緒に運ぶ役割を果たしてくれます。うーん、これはよく考えられている!

ある程度麺と具を楽しんだら、いよいよご飯を楽しみましょう。レンゲでスープをひとかけ、ふたかけ。良い感じにヒタヒタになったところでいきおいよくかきこむと、ご飯によってスープのコクが引き立てられ、お米の甘さがプラスされて一層輝きを増すのがわかります。甘辛い豚バラの、おかずとしてのパワーも抜群。これはご飯が止まりません!

卓上に設置された、徳島名産「すだち酢」をひとかけすると、今度はさわやかな酸味が加わり、ほどよく豚バラの脂が中和され、さらに何杯分もの食欲が。 ラーメンライスという次元を超えた、ひとつの料理としての魅力を感じました。

 

徳島と早稲田、2つの街に根ざす「うだつ食堂」

店内には、徳島のさまざまな名所の写真パネルが設置されているほか、店内のモニターでは、徳島県の四季や祭の風景が盛り込まれたプロモーションビデオが流れていて、食事をしながら、身も心も徳島県にいる気分に浸ることができます。

すっかり早稲田を代表するお店となった「うだつ食堂」ですが、かつてはライバル店にお客さんを取られ、苦しい状況に追い込まれたことも。そんななか、店を救ってくれたのは、地元の早稲田大学の学生たちだったといいます。

「サークルの広報誌にお店の宣伝を載せてくれて、学生に向けて広くPRをしてくれたんです。おかげでたくさんの学生さんがお店に来てくれて、ここまで続けることができました」(小林さん)

お店のアルバイト店員さんのなかにも早稲田の学生さんが多く、さらに徳島県出身の人も多いそう。「『うだつ食堂』の徳島ラーメンは、まさに地元の味! と太鼓判を押してくれています」とはにかむ小林さんでした。

徳島と早稲田、それぞれの「地元メシ」として愛される、「うだつ食堂」の徳島ラーメン。二つの街の架け橋として、今日も元気に営業しています。

 

■うだつ食堂
東京都新宿区西早稲田1-11-1
都電荒川線「早稲田」駅から徒歩約5分、東京メトロ東西線「早稲田」駅から徒歩約8分、東京メトロ有楽町線「江戸川橋」駅から徒歩約13分
営業時間: 11時00分~22時00分
定休日なし
03-5292-9711

取材・文・撮影 = 天谷窓大
企画・編集 = ロコラバ編集部(株式会社トランジットデザイン)

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