2007年03月/第42回 来日公演は終わったが

 この「プログラムガイド」を皆さんがお読みの頃には、ふたりの俊英指揮者がオーストリアとフィンランドの放送局のオーケストラを率いて来日、各地での演奏会を終えているはずである。
 この稿を書いているのは1月末なので、そのツアーがどのような結果になったかは知る由もないのだが、どうか盛況と喝采のうちに終わっていてほしいと願っている。というのも2人とも、わたしが将来を大いに期待している指揮者たちだからだ。ひとりはウィーン放送交響楽団を指揮したベルトラン・ド・ビリーであり、もうひとりはフィンランド放送交響楽団と来日するサカリ・オラモである。
 ふたりとも、純度と澄明度の高い、見通しのよい響きをもち、躍動感にみちたリズムを持っている。21世紀前半の主流となるだろう、俊敏な音楽性をそなえた指揮者たちなのだ。若手をなめてかかる傾向のつよい我が国での人気はまだ限られた範囲の中だけだが、今後はひたすらに増していく一方のはずである。
 オラモの方は幸い、今月の「ユーロ・ライヴ・セレクション」にも登場するので、演奏会を聴き損ねた方たちにもその指揮ぶりを聴いていただける。バルトーク、シベリウス、ラヴェルなど、オラモが得意とする近代の作品群だから、きっとその実力を確かめることができるはずだ。

山崎浩太郎(やまざきこうたろう)
1963年東京生まれ。早稲田大学法学部卒。演奏家たちの活動とその録音を、その生涯や同時代の社会状況において捉えなおし、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。著書に『クラシック・ヒストリカル108』『名指揮者列伝』(以上アルファベータ)、『クライバーが讃え、ショルティが恐れた男』(キングインターナショナル)、訳書にジョン・カルショー著『ニーベルングの指環』『レコードはまっすぐに』(以上学習研究社)などがある。
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