2009年07月/第70回 ウィーンの3つのオーケストラ

 今月の「ワールド・ライヴ・セレクション」では、ウィーンに本拠を置く3つのオーケストラの演奏会を4回にわたってお送りする。
 現在「ウィーン」の名を冠した常設の交響楽団は、ウィーン・フィル、ウィーン交響楽団、ウィーン放送交響楽団の3つ。ほかに日本ではウィーン・トンキュンストラー管弦楽団の名で知られている団体があるが、これは以前の名称で、現在の正式名称はニーダーエスターライヒ・トンキュンストラー管弦楽団(ニーダーエスターライヒとはウィーン市を囲む州の名前)。
 今回はその3つが顔を揃える。まず4日は、ドゥ・ビリー指揮のウィーン放送交響楽団。フランス人ながら首席指揮者を務めるドゥ・ビリーが、ウィーン・フィルのフランス人イケメン・ハーピスト、ドゥ・メストレと共演するハイドンのピアノ協奏曲(ハープ版)のライヴがまずききものだ。
 続く11日はルイージ指揮ウィーン交響楽団の演奏会。グリモーと共演のブラームスのピアノ協奏曲第1番がある。ルイージは実演で披露するブラームスの交響曲がいつも素晴らしい(ところがなぜかレコーディングしていない)ので、オーケストラ・パートの充実で名高いこの協奏曲も楽しみだ。
 18日はそのウィーン交響楽団が関係の深いウィーン楽友協会合唱団と共演して、プリンツ指揮でメンデルスゾーンの大作「エリア」。クヴァストホフなど、豪華な独唱陣が期待をそそる。
 そして25日はウィーン・フィル。今年9月の来日で共演するメータの指揮で「浄夜」とブルックナーの第9番。メータらしいマッチョな響きで聴かせてくれるだろう。

山崎浩太郎(やまざきこうたろう)
1963年東京生まれ。早稲田大学法学部卒。演奏家たちの活動とその録音を、その生涯や同時代の社会状況において捉えなおし、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。著書に『クラシック・ヒストリカル108』『名指揮者列伝』(以上アルファベータ)、『クライバーが讃え、ショルティが恐れた男』(キングインターナショナル)、訳書にジョン・カルショー著『ニーベルングの指環』『レコードはまっすぐに』(以上学習研究社)などがある。
山崎浩太郎のはんぶるオンライン

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