音楽コラム「Classicのススメ」


2010年01月/第76回 ザルツブルク音楽祭2009

 今月の「ワールド・ライヴ・セレクション」は、昨年のザルツブルク音楽祭のオーケストラ、歌曲リサイタル、室内楽、オペラを一つずつ、5回にわたってお送りする。
 あらためて2009年のザルツブルク音楽祭の全体の演目を見てみると、その多彩さに今さらながら目をみはる。かつては、ウィーン・フィルとザルツブルクのモーツァルテウム管弦楽団で大半のオペラと演奏会を占め、ゲストのオーケストラは数えるほどだったのが、現在はほかにもたくさんのスター・オーケストラが登場するのが当然になった。
 今年はドイツ・カンマーフィルがベートーヴェンの交響曲全曲を4回のチクルスで取り上げ、古楽勢ではフライブルク・バロック・オーケストラがオペラ「テオドーラ」、ルーヴル宮音楽隊とガブリエリ・プレイヤーズが演奏会。通常の交響楽団もロンドン響、コンセルトヘボウ、ベルリン・フィル、ウィーン放送響が顔を出し、ウェスト・イースタン・ディヴァン管弦楽団もベートーヴェンの「フィデリオ」を演奏会形式で上演している。
 歌曲リサイタルにもコジェナーと内田光子、クヴァストホフとフォークトなど、豪華な顔合わせが多かったが、なかでも今回放送するネトレプコとバレンボイムは、ネトレプコがお国物のロシア歌曲を歌ってくれるだけに期待できる。ヤルヴィもライヴでどんな演奏をするのか、セッション録音のCDとの聴き比べが興味深いし、音楽祭開幕を飾った「テオドーラ」はシェーファーほか、充実した歌唱陣もききものになるだろう。ウェスト・イースタン・ディヴァンのメンバーによる新ウィーン楽派とメンデルスゾーンもどんな響きなのか、楽しみだ。

山崎浩太郎(やまざきこうたろう)
1963年東京生まれ。早稲田大学法学部卒。演奏家たちの活動とその録音を、その生涯や同時代の社会状況において捉えなおし、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。著書に『クラシック・ヒストリカル108』『名指揮者列伝』(以上アルファベータ)、『クライバーが讃え、ショルティが恐れた男』(キングインターナショナル)、訳書にジョン・カルショー著『ニーベルングの指環』『レコードはまっすぐに』(以上学習研究社)などがある。
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