音楽コラム「Classicのススメ」


2006年01月②/第28回 「問題音源!?」ショルティ

 1月22日のBBC Concertでは、ショルティ指揮ロンドン交響楽団による、1968年のコンサートをご紹介する。

1961 年にコヴェント・ガーデンの王室歌劇場の音楽監督となって以降、イギリスとは縁の深かったショルティだけに、さまざまなオーケストラとのライヴ録音が bbcから放送されたのではないかと思う。しかし、現時点でbbcのアーカイヴズが提供しているのは、1963年のワーグナー・コンサート(こちらも以前 BBC Concertで放送した)と、今回の1968年のコンサートとの2種しかない。

 大物指揮者だけに権利関係などの問題があるのかも知れず、残念だがこれは今後の進展を待つほかない。というわけで、貴重なアイテムとなった今回のコンサートなのだけれど、実はこれにも2つ問題があった。

 ひとつは、後半の《英雄》交響曲のオリジナル音源が行方不明で、LPに転写した33回転盤(トランスクリプション・ディスクという)からの音源しかないこと。もうひとつは、前半の2曲め、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番が、BBCレジェンズですでにCD化されていることである。

 難しい問題だが、状態を確認するために音源を取り寄せて聴いてみた結果、放送することを決めた。まず転写盤からの音源にはLP特有のチリチリ・ノイズがあるし、音質もやや甘いが、音源の貴重さをかんがみれば許容範囲にあると判断した。

 もうひとつの、すでにCDがあるという問題も、聴き比べてみて解決した。オリジナル音源の生々しさと明快さは、CDをはるかに上回っている。これなら、あえて放送する意義も充分にある。コピー容易なデジタル時代になっても、やはりオリジナルは、オリジナルならではの存在価値を持っているのだ。

みなさんはどう判断されるか。どうぞお楽しみに。

山崎浩太郎(やまざきこうたろう)
1963年東京生まれ。早稲田大学法学部卒。演奏家たちの活動とその録音を、その生涯や同時代の社会状況において捉えなおし、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。著書に『クラシック・ヒストリカル108』『名指揮者列伝』(以上アルファベータ)、『クライバーが讃え、ショルティが恐れた男』(キングインターナショナル)、訳書にジョン・カルショー著『ニーベルングの指環』『レコードはまっすぐに』(以上学習研究社)などがある。
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