エレクトリック・マイルス前日譚

3月3日は前回に引き続き『プラグドニッケル(1965年)』。この作品が登場した前後にはコルトレーンが「至上の愛」を発表し、日本でも「前衛ジャズ」が芽生えてきた時期でもあります。この時代のマイルスは最先端のジャズを模索しつつもある種の「保守性」がありました。そこからは当時の音楽ビジネスや世界情勢と自身の芸術性との折り合いをいかにつけるか模索していたマイルスの慎重さが見えてきます。

 10日に放送する『マイルス・スマイルズ(1966年)』ではスタジオ録音におけるマイルスの「各楽曲(作品)に対する統制力」がいかに行き届いてきたかを見ることができます。そして1967年『ソーサラー(17日)』、『ネフェルティティ(24日)』、エレクトリック・マイルスを予感させる『ウォーター・ベイビーズ(31日)』などは、モダン・ジャズのニュー・クラシックスともいうべき名作で、傘下のハービー・ハンコック、ウェイン・ショーターらの諸作へ大影響を及ぼし、やがては世界の新しいジャズの在り方として広がっていくのです。(小針俊郎)