音楽コラム「Jazzのススメ」


2007年03月/第38回 謎の人妻A特別寄稿/赤い糸

人と人との出会いに運命的な何かを感じることがある。65億人もの人が住むこの地球上でたまたま「PCMジャズ喫茶」を聞いてファンになった私が、たまたま寺島さんに出会い、こうして「謎の人妻A」として「210歳トリオ」の皆さんと一緒に番組に出演させていただいているのも、何か「赤い糸」で結ばれているとしか思えない。

音楽にも同じような事を感じることがある。私の大好きな曲に「リバーマン」というのがある。この曲をブラッド・メルドーの演奏で聴いて「一目惚れ」して作曲者のニック・ドレイクと出会った。しかし彼はすでにこの世の人ではなかった。残された数枚のCDと「ニック・ドレイク悲しみのバイオグラフィー」という一冊の本が私をいっぺんに「本気」にさせた。「リバーマン」が入ってるだけでそのCDを聴いてみたくなる。

昨年発売されたドイツのトランぺッター、ティル・ブレナーの「オセアーナ」にもこの曲が入っていた。ティルの甘い歌声と情感溢れるミュート・トランペットで、曲の持つ美しさ、もの悲しさがじんわりとしみて来て益々好きになった。ティル・ブレナーを初めて知ったのが、ジャズ・アルバムのジャケットで有名な写真家ウイリアム・クラクストンの映画「JAZZシーン」を見てから。音楽監督を務めている彼の音楽が映像と素晴らしくマッチしていた。

赤い糸は伸びて今回番組で紹介する「マデリン・ペルー」に繋がる。「オセアーナ」の中、ハンク・ウイリアムスの曲「泣きたいほどの寂しさだ」で彼女はティル・ブレナーと共演している。ゆったりと肩の力を抜いて歌うこの曲を聴くと、タイトルのような深い淋しさも少しづつ薄まっていく。

マデリン・ペルーの新作「ハーフ・ザ・パーフェクト」の中にもティル・ブレナーと共演した曲が2曲入っている。「スマイル」を選んだ。あたたかい気持ちにさせてくれる彼女の歌を聴くと、まるで「淋しさもスマイルも同じことなんだよ」と思えてくる。そんな気にさせてくれるところに彼女の素晴らしさを感じる。

この先も「赤い糸」はまだまだ繋がっていきそうだ。

重藤敬子(しげとう・けいこ)
「PCMジャズ喫茶」レギュラー・ゲスト。