音楽コラム「Jazzのススメ」


2007年09月/第44回 女性シンガーを探して

戦後すぐにラジオで聴いて好きになったのが、ダイナ・ショア、ジョー・スタッフォード、ドリス・デイ、ローズマリー・クルーニー、ビング・クロスビー、フランク・シナトラといったシンガーたちのポピュラー・ヒット・ソングだったので、その後もヴォーカル好きは治らない。レコード店をのぞき、ちょっと美人で、面白そうな女性ヴォーカルのアルバムがあるとすぐに買ってしまう。

先日も吉祥寺のレコード店で、小野リサの新譜「小野リサ ソウル&ボッサ」を買ってきて聴いた。今回東芝EMIからエイベックスに移ったので、少しサウンドが変わった。ヴォーカルをリアルに録っている。これまでの彼女のCDを聞き込んできた僕などは、新しいヴォーカル・サウンドが耳になじむまでに少し時間がかかるかもしれない。

それにしても、小野リサの軽やかな歌い方はボサノヴァそのものであり、日本でこんなにボサノヴァをボサノヴァらしく歌える歌手はほかにいない。しかもスタンダード・ナンバーやポップス曲も途中にはさんで歌ってくれるから、なおうれしくなる。今回は「ジョージァ・オン・マイ・マインド」や「愛さずにはいられない」、「フォー・ワンス・イン・マイ・ライフ」といったナンバーもボッサ調で新鮮に歌っている。

ところで新人ではスゥエーデンの歌姫「ロヴィーサ/ザット・ガール」(SPICE OF LIFE)が気に入り、何度も繰り返し聴いた。好きなスタンダード、「アイ・フォール・イン・ラブ・トゥー・イージリー」「スカイラーク」「ルック・オブ・ラブ」「ホエン・アイ・フォール・ イン・ラブ」などを歌っているからでもあった。

それで早速「PCMジャズ喫茶」に持っていって「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラブ」をかけたのだが、寺島氏、長澤氏、Aさんの評判はよくない。寺島氏にいたっては「なんじゃ、これは!」である。

僕も自分の家のオーディオで聴いたときは、素直で可愛い歌いっぷりが素敵だと思ったのだが、Aさん宅の立派なオーディオ装置で聴くと、素人っぽくて、まるで歌の先生に言われる通りに、緊張して四角張って歌っていて、リラックスした楽しさがまるで消えてしまっているのだ。ものによってはリアルな音で聴いてはいけないのだろうか。よく映画女優など、小じわや毛穴なまで映さないため、「ソフト・フォーカス」を要求する例もあるが、歌の場合もあまりにもリアルに再現してはまずい場合もあるのだろうか。次回の録音の時に、オーディオに詳しい寺島・長澤両氏に聞いてみよう。

さて「PCMジャズ喫茶」、8月から一時間番組になったわけだが、二時間番組だったときと違って4人で喋って曲を聴いていると、下手をすると自分の分が一曲しかかけられないこともある。

先日もそんな目に会った。僕自身が選曲、監修した女性歌手のCDをかけようと思ったが、時間がなく、封も切らずに持ち帰ってきた。自信作?だったので残念なことをしたが、2枚組で40曲入りで30数人の女性歌手を収めていて、僕はヘレン・オコーネルの「アマ・ポーラ」か女優モーリン・オハラの「ニアネス・オブ・ユー」をかけようと思っていたのだが・・・・。

上記のふたりはアイルランド系であり、僕はこのところアイルランド系の歌手に興味を持ち、カーメル・クインのレコードや「ダニー・ボーイ」の入ったCDなどを探す毎日なのだ。

岩浪洋三(いわなみようぞう)
1933年愛媛県松山市生まれ。スイング・ジャーナル編集長を経て、1965年よりジャズ評論家に。
現在尚美学園大学、大学院客員教授。