音楽コラム「Jazzのススメ」


2011年3月/第86回 イタリア系テナー、ジョー・ロヴァーノの魅力

 ミュージックバードの番組出演を、体調を崩して休み、関係者や出演者に多大の迷惑をかけたが、1月16日に2ヶ月ぶりに退院し、1月31日にやっと復帰出演した(2月19日放送)。寺島靖国氏やAさん、それにゲストでドラマーの諸田富男氏の元気な姿に接し、なにか自分にも生気が戻ってきたようだ。

 ただ復帰出演といっても古いCDや日本盤だけ持っていっての出演ではいささか無責任である。

 それで2ヶ月ぶりに吉祥寺の輸入レコード店に足を運び、輸入CDを数枚買った。家で試聴すると、それほど当て外れのものはなく、早速録音日に持っていき、2枚ほどかけた。

 その中の一枚がテナー・サックス奏者のジョー・ロヴァーノの『バード・ソングス』である。ロヴァーノは名前で分かるようにイタリア系の白人テナーで、もっぱらニューヨークで活躍している。

 ただ、日本では不思議とあまり人気がない。彼の最高傑作『ジョー・ロヴァーノ・プレイズ・カルーソー』(Capitol)が日本で発売されていないからだろうか。 日本で白人のテナー奏者といえば、エリック・アレキサンダーやグラント・スチュアートの方が人気が高い。レコード会社の売り出し方がうまいからかもしれないが、アメリカではジョー・ロヴァーノの方がずっと人気がある。イタリア系ミュージシャンは人なつっこいところもあり、ライヴのやり方がうまいからかもしれない。また彼のよく歌うスケールの大きなテナーは、一度ライヴを聞くとファンになってしまうところがあるが、彼は意外と来日が少ないので、日本では人気が上がらないのか もしれない。

 僕はロヴァーノが好きで新譜が出ると買うことにしている。今回の新譜『バード・ソングス』では、チャーリー・パーカーのオリジナルや愛奏曲を集めて演奏している。パーカーはアルト・サックスでロヴァーノはテナー。ちょっと違和感を持つ人がいるかもしれないが、昔ソニー・ロリンズに『プレイズ・バード』(Prestige)というアルバムもあったし、少し前に日本のテナー奏者川島哲郎もパーカー愛奏曲集を吹き込んでいた。要は演奏次第ということになる。

 今回のロヴァーノはちょっとひねった演奏もみせるが、よく歌っているのと、ユーモアのセンスが生きているのがいい。

 僕は『バード・ソングス』の中からパーカーのオリジナル・ブルース「バルバドス」を選んでかけた。パーカーはこの曲をサヴォイに録音しているが、西インド諸島のバルバドス島をテーマにした曲である。ラテンの国ということで、この曲はラテン・リズムを用いて演奏されることが多い。パーカーの演奏もそうだったし、今度のロヴァーノもラテン・リズムを用いて演奏しており、ドラマーのほかにパーカッションも参加、メンバー・クレジットにはラテン系の名前のメンバーも見られて、エキサイティングな本場のラテン・リズムのよさに感心した。ロヴァーノ嫌いの寺島氏も珍しくこの盤のロヴァーノは気に入ったようだった。

 パーカーのオリジナルとパーカーの存在は不滅だ。

 今回の入院中、僕がよく聴いたのがチャーリー・パーカー、デューク・エリントン、ルイ・アームストロングのCDだった。この3人の演奏はいくら聴いてもあきがこないのだ。

 パーカーのアルトはシンプルで、暖かく、音の魅力も大きい。パーカー以前のアルトはジョニー・ホッジス、ウイリー・スミス、ベニー・カーターと、比較的線の細い、女性的な音の人が多かったが、パーカーはアルトを力強く、男性的に吹いた最初の人ではなかろうか。

 さて、この録音日の寺島さんは風邪をひいていて、自身で「日頃の美声がそこなわれて」などとのたまっていたが、むしろ低音の魅力が出ていたように僕は思ったのだが......。

 なお、この日の夜は高田馬場の「コットンクラブ」でジャズ界の新年会があるというので、寺島氏、Aさん、それに迎えにきてくれた越谷政義氏とパーティーに出かけた。ディレクターの太田氏も後からかけつけた。

 

岩浪洋三(いわなみようぞう)
1933年愛媛県松山市生まれ。スイング・ジャーナル編集長を経て、1965年よりジャズ評論家に。
現在尚美学園大学、大学院客員教授。