防災アナウンサー奥村奈津美さんが語る、自然環境を守りながら取り組む防災とは

2023.9.25 | Author: 池田アユリ
防災アナウンサー奥村奈津美さんが語る、自然環境を守りながら取り組む防災とは

毎週日曜11時から13時まで、全国のコミュニティFM(一部地域を除く)を結んで放送している地域SDGs情報バラエティ『ロコラバ』。今回は2023年8月27日放送の『地域人』のコーナーから、防災アナウンサーの取り組みを紹介します。

 

1923年(大正12年)9月1日に発生した関東大震災から、もうすぐ100年の節目となります。近年では、東日本大震災、熊本地震などの大きな震災に加え、台風や豪雨による河川氾濫、土砂崩れなどの自然災害も後を絶ちません。いつどこで起こるかわからない災害に対して、私たちが日ごろからできることは何でしょうか?

 

東日本大震災を仙台の放送局アナウンサーとして経験した、奥村奈津美(おくむら・なつみ)さん。現在は全国被災地の取材や支援ボランティアに力を入れ「防災アナウンサー」として活動中です。気候変動対策や、里山管理など自然環境を守る意識も防災に繋がることを発信しています。

防災アナウンサーが経験した、東日本大震災

――奥村さんは東京生まれです。広島や仙台で8年間、地方局アナウンサーとして活動しました。その後、東京に戻り、2013年からはフリーアナウンサーとして、NHKの「ニュースウオッチ9」を担当するなど活躍。東日本大震災を機に、防災士、福祉防災認定コーチ、 防災教育推進協会講師、防災住宅研究所理事として防災啓発活動に携わっています。奥村さん、東日本大震災の時、仙台でアナウンサーをされていたそうですね。発生時はどのような状況でしたか?

地震が起きた時は、仙台市内の自宅マンションの7階にいて、キッチンで料理をしていたんです。カタカタッという揺れとともに、鍋が自分の方にひっくり返ってきて。今度は冷蔵庫の上のオーブンレンジが自分の方に飛んできました。 それを避けつつ、4分間ぐらいの揺れに耐えていたんです。固定していないものは全部倒れて、私はドアノブにしがみついていました。

自分が住んでいたエリアは、震度6弱の揺れでした。 6弱というと、5とは比較できないぐらいの揺れです。「地球が壊れちゃうんじゃないか」と思うほど、立っていられない状況でした。人生で初めて死の恐怖を感じましたね。

――地震が収まった後、テレビ局に向かわれたんですか。

そうですね。ただ、タクシーも捕まらなかったので、まずは家の近くにある県庁に取材に行きました。夜に車で迎えに来てもらい、局に戻ったんですが、スタジオの照明は床に落ちていて、ぐちゃぐちゃな状態でしたね。 地震直後は停電していたものの、放送局は非常用電源で、しばらくは放送できました。ですがうまく動かず、報道フロアに中継車を横付けして、電波を飛ばさなければならない状況でした。

――大変な状況でしたね。スタッフの皆さんも被災者ですから、自分のお家や家族のことも心配だったと思います。

緊急災害報道なので、72時間ノンストップで放送していましたね。地方局で人も少ないですし、みんな3日間ほとんど寝ずに情報を伝えていました。私も1ヶ月後に体重を測ったら、10キロ近く痩せていて。 それだけ過酷な環境だったと思います。

奥村奈津美さん

 

「知らないことが1番怖い」

――震災後、さまざまな場所を取材し、復旧ボランティアにも行かれたそうですね。印象的だったことはありますか。

石巻市で当時6歳のお子さんを亡くしたお母さんとお会いしました。今も交流を続けています。地震が起きた時、そのお子さんは幼稚園にいたんです。お母さんとしては「園は高台にあるから大丈夫だ」と思っていて。自宅周辺のエリアの水が引くのを待って、3日後に幼稚園に駆けつけたそうです。

すると、娘さんの姿がない。先生の話を聞くと、大津波警報が出ている中でなぜか送迎バスが海に向かって走ってしまい、 津波で被災し、そのエリアでは延焼火災が発生。火災に巻き込まれて、娘さんは亡くなっていたことがわかりました。そのお母さんの言葉に「知らないことが1番怖いことです」というものがありました。幼稚園の防災マニュアルを確認したり、対策に取り組んだり。平時から気を付けていなければ、子どもたちが犠牲になってしまうのだと……。この言葉が、自分の防災活動の原点です。

だからこそ、起きてからでは手遅れなので、起きる前に対策してほしい。幼稚園児や乳幼児、 高齢の方や障害のある方は、自分だけでは逃げられません。周りの大人たちがどう判断し、サポートするかが大事になるんです。

――無事に避難できたとしても、今度は避難所での暮らしも大変ですよね。たとえば車椅子を使われている方なら、専用のトイレじゃないと難しいなど、さまざまな問題がでてきそうです。

要配慮者と呼ばれる特別な備えが必要な方々は、国からも「つねに2週間分の備蓄をするように」と言われています。東日本大震災の時にアレルギーがあるお子さんを抱えて、津波から逃げた方がいらっしゃいました。「4日間は何も食べるものにあり付けなくて、餓死しそうになった」とお話されていたんです。今は、当時より備えが進んでいるとは思うのですが 「日頃から備えておかないと」と痛感しましたね。


パーソナル防災サービス「PASOBO」で自宅のリスクと必要な備えをチェック!

――夏は、大雨災害も非常に心配ですね。

環境省でも、気候変動ではなく気候危機と受け止めています。最近ですと、7月の世界の平均気温が最も高くなり 「地球温暖化ではなく、沸騰の時代を迎えた」というニュースもありました。地球のフェーズが変わり、これまで経験したことがない災害が起きる時代になっていくと思います。

たとえば、気温が1度上がると、水蒸気量が7%ほど増えると言われています。すると、雨の降り方が変わってしまうんですね。台風も威力を増していきます。地球温暖化に対して二酸化炭素の排出量を削減するなどの対策を進めていかないと、根本的な防災にならないように思います。

――地球環境に取り組むことも、防災に繋がってくるんですね。クマやイノシシが餌を求めて山から降りてくることがありますが、自然災害の1つとして餌になるものが減っている現状もあるんでしょうね。

そうですね。地球上の生き物すべてがともに暮らせるようになることが「究極の防災」だと思います。防災と聞くと、防災リュックなどをイメージしがちですが、再生可能エネルギーに切り替えるなど、日々の暮らしの中で取り組める防災がたくさんあります。

――奥村さんが監修に関わった防災サイトでも、こういった知識を知ることができるそうですね。

はい。「PASOBO(パソボ)」はパーソナル防災サービスの略なんですが、1分で自宅のリスクと必要な備えがわかり、防災グッズも買えるサービスです。

防災で大切なことは、地域のリスクを知ることなんです。メディアなどでも「ハザードマップを見るように」と言われますが、多くの方から「見てもわからない」「そもそも見たことがない」という声を聞きます。 そういった課題を解決すべく、住所や家族構成などを入力するだけで、どのぐらい自分の家が揺れるのか、土砂災害や津波のリスクがあるのかを、1分で見える化するサービスを作りました。

――人によって対策はそれぞれですもんね。最後に、リスナーの皆さんへメッセージをお願いします。

気候危機の時代とお伝えしましたが、国内最大級の災害と言われている南海トラフ巨大地震や首都直下地震など、 ほぼ確実に起きるだろうと専門家の皆さんもおっしゃっています。災害が起きた時、自分の命を守れるのは自分しかいないので、ぜひ備えていただきたいと思います。

私のYouTubeチャンネルでは、地震対策徹底攻略版というシリーズをお送りしています。ぜひチャンネル登録をしていただけたらと思います。PASOBOで使える15%OFFのクーポンもお渡ししていますので、ぜひ防災グッズを買う際に役立ててください。

――奥村さん、ありがとうございました!

***

(番組パーソナリティ 横田)
一般的にこれだけ用意した方がいいものって、市でも配られることがありますが、自分に合った防災を考えたことがなかったなと。これから見直したいと思います。

(番組パーソナリティ 川久保)
私は猫を3匹飼っているので、非常時用の彼らのごはんも用意しておこうと思います。

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文・構成=池田アユリ
編集 = ロコラバ編集部

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