「なみえ星降る農園」が生んだブランド野菜「ゴルゴ・ナミエ」「月と太陽」とは|福島県浪江町

2023.9.21 | Author: 池田アユリ
「なみえ星降る農園」が生んだブランド野菜「ゴルゴ・ナミエ」「月と太陽」とは|福島県浪江町

毎週日曜11時から13時まで、全国のコミュニティFM(一部地域を除く)を結んで放送している地域SDGs情報バラエティ『ロコラバ』。今回は2023年8月13日放送の『深掘り』のコーナーから、福島県でさまざまな農作物を実験的に栽培する農場の取り組みを紹介します。

 

一般社団法人 東の食の会は、震災によって被害を受けた東日本の食産業の長期的支援を目的として2011 年に創設されました。

 

同法人は福島県浪江町に、さまざまな農作物を実験的に栽培していくコミュニティ実験農場「なみえ星降る農園」を2021年に開園。肥料として土壌改良と獣害対策に有効とされるヒトデを活用し、珍しい作物の栽培に取り組んできました。

 

その中から好評を得たビーツを、「ゴルゴ・ナミエ」「月と太陽」という2つのブランド名で現在栽培中です。浪江町の名産野菜に育てることを目指して、日々奮闘しています。

 

今回は、「なみえ星降る農園」グロワー・伊藤悠河(いとう・ゆうが)さんにお話を伺いました。

スーツ販売員、栽培家に転身!

――伊藤さんは愛知県出身です。以前は伊勢丹新宿店でスーツ関連の販売員として勤めていました。2022年に福島県の南相馬に移住し、現在は地域コミュニティの中で複数の仕事をこなしています。伊藤さん、なかなかのシフトチェンジでしたね。コミュニティ実験農場「なみえ星降る農園」についてお聞かせいただけますか。

いろんなものを実験的に栽培しています。福島県は津波や原発事故があった地域なので、コミュニティの再生を目的として取り組んでいます。

――移住したきっかけは?

百貨店の販売員時代に、洋服の原料であるコットンに興味を持ったんです。そこで、コットンを作っている福島の農園に遊びに行ったことがきっかけでした。震災後、初めて福島を訪れた時「こういった地域に身を置いてみたい」という気持ちが芽生えて、気が付いたら移住していました。

――「なみえ星降る農園」には、伊藤さんのような方が集まっているのでしょうか。

そうですね。地元の方にも手伝っていただいています。土や気候など、ここの環境を知っている人たちばかりなので、意見を聞くだけでためになりますね。

 

ブランド野菜「ゴルゴ・ナミエ」「月と太陽」って?

――農園で作られたブランド野菜のビーツ「ゴルゴ・ナミエ」ですが、なかなか強そうな名前ですね。

ビーツという種類の、見た目がカブのような食べ物です。「ゴルゴ」は、ビーツの品種名なんですよ。名前のインパクトが強いですよね(笑)。

――ヒットマンを思い浮かべました(笑)。

この土地で試した実験段階の時、「ゴルゴの実がならなかったら『ゴルゴ・浪江で死す』だね」なんて冗談半分で話していて……。幸い、実がなったので「ゴルゴ・ナミエ」になりました。

――あはは(笑)

真ん中から割ると、色鮮やかな断面を見られます。白色をベースに、赤色の線がぐるぐる巻いているような見た目です。

――もうひとつの「月と太陽」とは?

「月と太陽」は、ルナとソーレという2種類の品種です。月と太陽と例えるように、黄色と赤紫色をしていて、2個をセットにしています。

「月と太陽」

――味の方はいかがでしょう。

それぞれ味の違いはありますが、ビーツの特徴的な苦みと甘みを感じます。

――どこで購入できますか?

これから収穫する段階なので、まだ売られてはいないんです。「みちの駅 なみえ」というところがありまして、そこで販売できればと考えています。

――その他にはどんなものを栽培しているのでしょう?

藍染めで使うタデアイや、お酒の原料になるジュニパーベリーやアガベテキラナ。あとはカシスとレモンなども栽培しています。


ヒトデを使った害獣対策を実験中!

――ヒトデを使った害獣対策を行っているそうですね。

そうですね。「なみえ星降る農園」という名前の由来にもなっています。もともと肥料や土壌改良のため、ヒトデを畑に撒くという方法がありました。「猿やイノシシにとって嗅いだことのない海の香りが付いているから、きっと近づかないのではないか?」ということで、実験的に取り組んでいます。

――ヒトデは粉末状にして撒くんですか。

そのままです。 乾燥させたヒトデを子どもたちに色付けしてもらい、それを撒いています。

――星がパッと広がっているみたいで素敵ですね。地域の方は、この農園をどのように受け止めているのでしょう。

農園は浪江町樋渡(ひわたし)にあるのですが、この地域の方々がとても好意的で、土地を探していた時に「ぜひ使ってください」と言ってくれました。今は地元の皆さんが種まきを手伝ってくれることもあります。地元のコミュニティとして確立できているように感じますね。

――最後にリスナーの皆さんにメッセージをお願いします。

震災があった地域というマイナスなイメージもあるかと思いますが、この農園の取り組みによって、プラスの部分にも目を向けていただきたいです。みなさんが足を運ぶきっかけになればと思っています。

――伊藤さん、ありがとうございました!

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文・構成=池田アユリ
編集 = ロコラバ編集部

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