毎週日曜11時から13時まで、全国のコミュニティFM(一部地域を除く)を結んで放送している地域SDGs情報バラエティ『ロコラバ』。今回は4月9日放送の『地域人』のコーナーから、奈良県の靴下メーカーのユニークな取り組みをご紹介します。
奈良県は日本一の靴下生産地。江戸時代より大和木綿の栽培が盛んだったことから、その綿を利用した糸や織物の産業が発展しました。明治時代の近代化の波に乗り、靴下生産が農家の副業として広がったと言われています。
創業65年の老舗メーカー「鈴木靴下」は、農家の経験から「廃棄される米ぬか」に着目。保湿性の高い“米ぬか繊維”を開発し、唯一無二の靴下「歩くぬか袋」が誕生しました。農家だからこそ知っていた“米ぬかの力”を活かし、環境にも肌にも優しいこの靴下は、足元だけでなく履く人々の心も温めています。今回は、株式会社鈴木靴下の代表、鈴木和夫(すずき・かずお)さんにお話しを伺いました。
――「鈴木靴下」は、創業当時はまだ珍しかった子供用靴下の製造にいち早く取り組み、昭和62年にスポーツソックスに参入しました。サッカー日本代表やJリーグのサッカーストッキングの製造にも携わっています。鈴木さん、サッカー選手の靴下も作っているんですか。
はい。製造の全体の7割がサッカーストッキングです。
――主力商品なんですね。1ミリのゴールを決めた三苫選手も履いていたとか。
今はどうかわかりませんが、ジュニアのころの写真を見たら、うちで作った靴下を履いていましたね。
――平成16年から農家の仕事と靴下づくりの経験を生かして、「米ぬかソックス」の開発を開始したそうですね。「米ぬかと靴下」という組み合わせは、どういう経緯で生まれたのでしょうか。
私の家は兼業農家で、3000坪の田んぼを所有しています。精米した時にでる米ぬかを田んぼにほかし(田んぼの土に還し)ていたんですね。「もったいないなぁ」という気持ちがずっとありました。
子どものころ、学校の廊下を米ぬかで拭いたら、ツルツルピカピカになったことを覚えていて。「米ぬかを利用して靴下にすることができたら、足がすべすべになるのかな?」っていう気持ちで始めたんです。
――米ぬかの靴下づくりについて、苦労したこと、力を入れたことなどあれば教えてください。
19年前、私が45歳の時なんですが、最初は紡績工場に「米ぬかを糸にしてもらうことはできませんか?」と相談しました。ただ、なかなか関心を持ってもらえず、「ほんなら、1回自分で始めてみるか」と思い、鍋に靴下と米ぬかを入れて煮込んで炊いたというのが始まりです。
――煮込む!?(笑)
何の根拠もなしにやったんです。子どもが砂場で遊んだ時、汚れが取れないじゃないですか。それと同じように、煮込めば靴下の網目に米ぬかが入って取れなくなるんじゃないかなと思ったんです。
――実際にやってみて、いかがでした?
洗ったら、全部粉となって飛び散っていきました。
――あはは(笑)。でも研究を重ねた結果、紡績工場と一緒に開発するようになったんですよね。
そうですね。まず、米ぬかのことを専門の先生にイチから指導いただいて、米ぬかの成分を抽出したものを糸に加工していく方法がいいと教えていただきました。
――完成した米ぬかの靴下「歩くぬか袋」はどんな特長がありますか。
高い保湿性とその滑らかな肌触りが特徴です。加齢臭や汗のにおいなどの消臭機能もあります。
――冬場に保湿力は大切ですし、夏は蒸れますから、においを抑えてくれるのはすごく助かりますね。
――今後はどんな展開を予定されていますか?
今年の7月1日に会社の前にて、米ぬかの店舗をオープンします。東京でも大阪でもない場所を選んだのは、この地で靴下が生まれたからです。春には小鳥が鳴き、梅雨にはカエルが鳴く。行き交うのはトラクター……。そんな美しい景色のある町で情報を発信していきたいと思って、お店を作ろうと思いました。
――主にどんなものを売るのでしょう?
米ぬかを使った靴下や肌着、手袋などの製品を販売しようと思っています。
――実際に購入された方からの評判はいかがですか?
さまざまなメディアさんで取り上げてもらい、インターネットの通販でたびたびランキング1位になっています。
――おおっ。インターネットで買うこともできるんですね。
はい。「鈴木靴下」で検索していただいたら出てくると思います。
――鈴木さんの奥様も、米ぬかの靴下を履いてらっしゃる?
そうですね。まぁ、喜んでくれてると思います(笑)。
――最後に、リスナーの皆さんへメッセージをお願いします。
米ぬか繊維は、ここにしかないというのが1つの特徴です。50年の開発物語があり、簡単にできたんじゃなく、米ぬかだけをひたすら追いかけてきたんですね。 素材の開発から店舗の販売まで携わっているのは、同業者の中でも類のないものと自負しています。
――皆さん、ぜひお試しください。鈴木さん、ありがとうございました!
***
(番組パーソナリティー 横田さんコメント)
お店、気になりますね。「こういうところで生まれたんだよ」っていうその背景までも伝えよう」と思って店舗を構えられたというお話が、すごく、心に残りました。
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文・構成 = 池田アユリ
写真提供 = 株式会社鈴木靴下
編集 = ロコラバ編集部