備前焼の製造過程で出る“陶器ごみ”を粉砕してリサイクル! 「RI-CO 再生備前シリーズ」|岡山県備前市

2023.4.17 | Author: 池田アユリ
備前焼の製造過程で出る“陶器ごみ”を粉砕してリサイクル! 「RI-CO 再生備前シリーズ」|岡山県備前市

毎週日曜11時から13時まで、全国のコミュニティFM(一部地域を除く)を結んで放送している地域SDGs情報バラエティ『ロコラバ』。今回は2月26日放送の『地域人』のコーナーから、岡山県で廃棄される備前焼を再利用する会社の取り組みをご紹介します。

 

岡山県備前市で約1000年の歴史をもつ伝統工芸「備前焼」。この土地でしか取れない良質な土を使った、赤褐色の美しい焼き物として古くから愛されています。しかし、高い制作技術を伴うことから、工程途中で廃棄せざるを得ないものが1割以上出てきてしまうという問題を抱えています。

 

そこで「株式会社the continue.」は、埋め立てる以外に処理方法がなかった陶器ごみに着目。「RI-CO(リッコ) 再生備前シリーズ」として、廃棄される備前焼を粉砕して再利用し、マグカップやコーヒードリッパーなどの日用品として生まれ変わらせています。今回は、限りある“備前の土”を循環させることで、地球の資源だけでなく、日本の伝統工芸に貢献する同社の代表取締役・牧沙緒里(まき・さおり)さんにお話しを伺いました。

 

土だけを使って約2週間かけて焼く備前焼

――以前、牧さんは司法書士の法人会社を経営されていました。その後、6年前に身内の経営する岡山県備前市の耐火煉瓦(溶鉱炉やピザの窯などに使われるレンガ)のメーカーで働き、2021年に「株式会社the continue.」を設立。牧さんはいろんな経験をなさっていますね。

ここは田舎なので、身内の会社も人手不足でした。司法書士の会社は別の人にお願いして、手伝うようになったことが始まりでしたね。

――備前焼は約1000年前、平安時代からあると聞きました。

日本で最も古い焼き物のひとつで、800年から1000年くらいの歴史を持つと言われています特徴は、「うわぐすり(陶磁器の表面に塗る光沢を出すための溶液)」を使わず、「絵付け」をしないことです。土だけを使って薪の窯で約2週間かけて焼きます。

――ということは、2週間も窯の前にいる必要があるのでしょうか?

そうですね。10分おきに薪をくべる必要がある工程もあるそうです。備前焼はメーカーがあるわけではないので、作家さん同士が援護しあいながら交代で手伝っています。

――作る過程はそんなに大変なんですね。ヒビや欠けなどによる失敗作品である「陶器ごみ」に着目したきっかけは?

ある日、窯元(陶磁器を作る人)さんに伺った時、たくさんの陶器ごみが置いてありました。話を聞いてみると「埋め立て処分予定」ということでした。備前焼は、高価なものは何千万円もするほど貴重な焼き物です。「釉薬(陶磁器の表面に付着したガラスの層)も使ってないし、自然のものだけで化学物質も入ってないならリサイクルできる!」と、レンガのリサイクル事業を行っていたことから着想を得たのがきっかけです。その後、レンガ会社で働きながら、社内ベンチャーのような形で、備前焼のリサイクルに着手しました。

 

縄文土器は、土に戻らない!?

――仮に埋めたとしても、もともと土を焼いて固めたものなら自然に害はないのでしょうか。

害はないのですが、ものすごく長い時間や大きな地殻変動などがなければ、焼き物が自然に還ることはないんです。たとえば、縄文土器や軽く焼いたものでも土に戻らないんですね。そこは皆さんが、焼き物は土に還ると勘違いしてしまっている部分かもしれません。

――なるほど。再利用の取り組みは、どのようにされているんですか?

ここは備前焼作家が200人以上いると言われる産地ですので、組合にお願いして皆さんの陶器ごみを1箇所に集め、産業から出るものを回収しています。また、市役所にも働きかけをして、市町村でも回収ボックスを設置していただきました。作り方は回収したものを数ミリから数ミクロンまで砕き、備前の土と水だけを加えて、型などに入れて製品化します

――「RI-CO(リッコ) 再生備前シリーズ」で作られた製品の一つに、コーヒードリッパーがあります。普通は下の部分にコーヒーを抽出する穴が開いていますが、その穴がないと聞きました。

陶器のかけらを1ミリくらいに砕いて焼くと、隙間が開きます。その隙間は網目状になっており、そこからコーヒーを落とせるんです。つまようじの先端ほどの穴がたくさん開いているイメージです。

また、備前焼の素材は、コーヒーを飲み込んだ後の雑味・苦みを取ってくれる効果がありますので、リサイクルした製品も味がまろやかに変化していきます。

――リサイクルして作られたコーヒーカップと一緒に合わせて使うと、他とは異なる味わいを楽しめそうですね。

コーヒーカップを使った多くの方から「味がまろやかになった」というお声をいただいきます。コーヒー好きの方にはぜひ試していただきたいですね。

 

話題のコーヒードリッパー

――WEBサイトを拝見したところ、 コーヒードリッパーは販売されていないようですが。

ドリッパーはたくさん生産できるものではないので、 大きな陶器のかけらが集まった時にまとめて100個ほど作るんです。販売店がまとめて買われていくこともあり、すぐになくなってしまいます。

――御社の製品と、正規の備前焼の違いは?

備前焼は伝統工芸なので、手作りで作られる必要と、備前焼の伝統的な発色や模様を出すというルールがあります。トラディショナルというか、趣ある渋い雰囲気に仕上がります。弊社の製品は、どちらかというとシンプルな無地のものやワンポイントをあしらったカジュアルなデザインを使っています。

ただ、釉薬は使いませんので、備前の土100パーセントで土の手触りというのを感じていただけます。伝統的なものとカジュアルなものの間、という感じでしょうか。もちろん、リサイクルできる素材以外は使わないようにしています。

――そちらのマグカップを購入し、使っていて割れてしまった場合、またリサイクルできるのでしょうか。

弊社まで送っていただく費用がかかりますが、販売したものはすべてお引き取りします。備前市内には回収ボックスも設置されています。

――永遠のリサイクルですね。それでは、リスナーの皆さんにメッセージをお願いします。

陶器のリサイクル事業を始めてまだ1年ほどの会社です。「備前焼リサイクル」と検索していただき、日常生活に陶器のリサイクルを取り込んでもらえたらと思います。

***

(番組パーソナリティー 横田さんコメント)
これは興味深いですね。土は簡単に自然に帰るものだと思っていたので、縄文土器の話を聞いた時、ハッとしました!

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文・構成 池田アユリ

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