コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー


第193回/オーディオ機器の理想はオールインワン?[村井裕弥]

 オーディオシステムは極力シンプルなほうが、音質的にも有利なのではないか!? ここ数年間、そんなことばかり考えている。

 そりゃ確かに、左右独立・電源部も独立させたSACD/CDプレーヤーは目覚ましく音がよいし、アンプだって、プリとパワーを分け、さらに左右別にして、電源部も別にしたほうがよいに決まっている。そこまで行ったら、当然マルチウェイ・スピーカーもマルチアンプ駆動? となれば、位相を合わせるデジタル・チャンネルデバイダーも必須。いや、それだけではない。世の中には、「○○と××の間に挿入すると、音がよくなる」というグッズが数え切れぬほど存在する。それらを駆使して、輝かしく情報量豊かな音を出している才人を、筆者は何人も知っている。


Decca Decola(画像提供:オーディオリサイクル ユニティ

 しかし筆者は、そういった方々の真似をしたいとは思わない。そうやって機器の数を増やしていくと、当然ラックの棚板を増やさねばならない。電源ケーブル(コンセントの口数)も増やさねばならない。機器と機器を結ぶケーブルの数も増える(当然接点が増え、電気的、電磁波的、電波的に、悪いことだらけ)。発熱やら消費電力やら機器のうなりも無視できないが、多くの機器に電源を入れたり、切ったりする手間も好きではない。しかもそこには「この順番で入れるように」「この順番で切るように」といった注意事項が生じることも…。

 だからホンネは、オールインワンが理想。1筐体の中に、SACD/CDプレーヤーとデジタルアンプを内蔵。さらにはデジタル入力とフォノ入力まで備える製品がいくつか存在するが、発売からかなりの年数が経過し、「もっと上位のデジタルフォーマットにも対応してくれたらよいのに」と思うことが増えた。PCM 384kHz 32bitも、DSD 11.2MHzも肩の力を抜いて楽しみたいからだ。

 オールインワンがそこまで進化してくれると、現在筆者宅にずらりと並ぶSACD/CDプレーヤー、プリ・メインアンプ、D/Aコンバーターが1筐体ですむ。いや何、何度も言うが、機器を減らすのが目的ではない。そうすることで、音質の足を引っ張る要因を減らしたいという話だ。

 こうなったらいっそのことデッカのデコラみたいなオールインワン(アナログプレーヤー+管球式アンプ+スピーカー)に、SACD/CDプレーヤーと各種デジタル入力端子を付けた製品を、どこか作ってくれぬものか(JBLパラゴン同様、音のよさは左右連結もあと押ししてのことと思われる)。価格は100万円以内が理想。いや、300万円までならよしとしよう。機器の相性や、ケーブルの選択で頭を悩ませたくない音楽ファンは、国内外にかなりの数いらっしゃるはず!

 iFi-AudioのSTEREO50DENON PMA-60あたりに、FAL C90マークオーディオのフルレンジユニットを組合せて一体化すれば、あと少しで理想のシステムができあがるように思われるのだが、いかがなものか!?

(2018年6月20日更新)  第192回に戻る 第194回に進む
村井裕弥

村井裕弥(むらいひろや)

音楽之友社「ステレオ」、共同通信社「AUDIO BASIC」、音元出版「オーディオアクセサリー」で、ホンネを書きまくるオーディオ評論家。各種オーディオ・イベントでは講演も行っています。著書『これだ!オーディオ術』(青弓社)。

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