コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー


第88回/電源アイソレーショントランスのすすめ [村井裕弥]

 先日、とあるオーディオ機器を買い換えた。だいたい3年置きに買い換えているが、そのたび小型化され、価格も下がる。それはうれしいのだが、今回頭をかかえたのは音質。この製品につなぎかえた途端、全体に歪みっぽく、品位の低い音になってしまった。ギターは弦が錆びているように聞こえるし、ベースもゆるゆる。こんな音じゃ、仕事も生活もやっていられない!

 さて、どうしよう。もちろん、高級機に買い換えれば問題は解消するが、それではあまりに芸がない。本格的な改造とか、電源部の交換も、中途半端に理解した人がムチャをして、火事など起こす可能性があるからやめておこう。誰でも簡単に真似できて、効果大。事故を起こす可能性もゼロ。そんな妙手はないものか。

 2時間ほどかけて、いろいろなものを貼ったり、巻いたり、敷いたり、試行錯誤。最終的にたどり着いたのはアイソレーショントランスだった。コンセントとこの製品の間に、中村製作所のCDプレーヤー用電源トランスを入れる(現行モデルというとNSIT-80Tあたり)。たったそれだけのことで、歪みっぽさが消え、品位も向上。ベースも、マッチョにドカン(!)と飛んでくるようになった。


中村製作所 NSIT-80T

出水電器 アイソレーショントランスCT-1.5

 要するに、この製品が発している高周波ノイズが他のオーディオ機器に及ばぬよう隔離・分断したというわけだ。

 そういえば数か月前自宅試聴した出水電器のアイソレーショントランスCT-1.5も素晴らしかった。CDプレーヤーとコンセントの間に入れると、部屋がさっと静まり、楽音がより自由闊達に(演奏そのものが自発性・即興性を増したかのように聞こえるのだ)。それはまるで、CDプレーヤーを2ランクくらい上の機種に取り換えたかのような変化だった。

 もちろん、すべてのオーディオ機器に完璧なノイズ対策が施され、他の機器への悪影響がゼロになるのが理想だが、現実はなかなかそうならない。むしろ「とてもよい製品なんだけど、そこだけ惜しい」という例によく遭遇する。

 今回「この製品の記事を書け」という依頼はどこからも来なかったが、もし来ていたらどう書いていただろう。いや、ここには書かなかったが、長所もたくさんあるのだ。しかし、よいところばかり書いておしまいというわけにはいかない。「ご購入の際は、アイソレーショントランスもごいっしょに」と締めくくる? まあ、それを言いだしたら、「あれにも、これにもそう書かなきゃ」ということになってしまうのだが。
 幸い、中村製作所も、出水電器も、トランスの貸し出しをおこなっている。「どの程度効くのか」「どう効くのか」ぜひ体験していただきたい。

(2015年7月21日更新) 第87回に戻る 第89回に進む 

村井裕弥

村井裕弥(むらいひろや)

音楽之友社「ステレオ」、共同通信社「AUDIO BASIC」、音元出版「オーディオアクセサリー」で、ホンネを書きまくるオーディオ評論家。各種オーディオ・イベントでは講演も行っています。著書『これだ!オーディオ術』(青弓社)。

  • これだ!オーディオ術~お宝盤徹底リサーチ~
  • お持ちの機器との接続方法
    コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」バックナンバー