コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー

第115回/TANNOYパワードスピーカーがわが家の主役に

[村井裕弥]




 4月1日(金)、とあるスピーカーが届いた。「TANNOYの一番ほしいスピーカーを買ったよ」と事前に伝えてあったので、ウチのやつは「Kingdom Royal Carbon BlackWestminster Royal / GRが配送される」とびびっていたらしい。しかし、やって来たのは両手で軽々持ち上げられる程度の段ボール箱1つ。TANNOYといっても業務用パワードスピーカー。ウーファーの径はたったの10センチ。お値段、ペアで28,000円くらい(4月から少々値上がりしたようだが)。
 その夜「いくらエイプリルフールだからってあんまりよ!」と責められたことは言うまでもない。
 型番はReveal 402。502、802と次第にウーファーの径が大きくなっていくが、あえて一番小さな402をチョイス。それは、小さなユニットのほうがより正確に動作するからであり、自分がめざす世界に近いと思われたからだ。

 友人たちの間でちょうどAIR TIGHT AL-05が話題になっていたので、「そっちを買おうか」という気も少しあった。しかし、当たり前だが、AL-5はパワードスピーカーでないから、それに見合ったアンプを買わねばならぬ。




TANNOY Reveal 402

 筆者は近年「パワーアンプとスピーカーを結ぶケーブルを少しでも短くしたい(そちらのほうが自分の好きな音になりやすい)」と感じるようになったので、当然モノラルタイプのパワーアンプ(TRIODEのTRV-300SEあたり)を2台買うことになろう。しかし、小型スピーカーはスタンドに載せて使うことになるから、その高さの分だけ(50-60センチ)スピーカーケーブルが長くなってしまう。それによる音質劣化が気になって仕方ないのだ。スピーカーケーブルは、限りなく0センチに近付けたい!
 いや、もちろん10メートル以上のスピーカーケーブルを使ってよい音を出している「達人」が多くいらっしゃるのは知っている。その方たちに「スピーカーケーブルを短くしなよ」などと提言するは毛頭ない。ただ、自分の家で自分の好きな音を追求していてくと、どうしてもそこに行き着いてしまうのだ。

 結局筆者の背中をぐいと押してくれたのは「4月1日からReveal 402が値上がりするらしい」という情報であった。「値上がりしてから、買っときゃよかったとウジウジするのは嫌だなぁ」と思い、3月31日のうちに某通販サイトでオーダー。万が一ハズレだったら、処分すればよい。

 ちなみにこの間、Revealシリーズの自宅試聴はもちろん、店頭試聴もおこなっていない。何度か同じことを書いているが、筆者の場合、自宅試聴などをくり返して慎重に買った製品より、直感と気合いで『えいやっ』と買った製品のほうが当たりなのだ。アマティ・オマージュも、ルーメンホワイト「ホワイトライト」もみんな直感で買った。その逆に、上級者に相談して買った製品は、ことごとくアウト!! 1年間居ついた試しがない。








 audio-technica AT514CM


 とここまで書いて脳裏に浮かんだのは、昨春、東京文化会館で山崎まさよしのライヴを取材したときのこと。モニタールームに置かれていたTANNOYの業務用パワードスピーカー(確かひとつ前の世代)がえらくイキのよい音で鳴っていた。ひょっとすると、あの記憶が無意識に背中を押したのかもしれない。
 そういう経緯でわが家にやってきたReveal 402だが、パワードスピーカーだから、もちろんスピーカーケーブルでつなぐわけにはいかない。背面を見ると、入力は6.3ミリ径のモノラル標準ジャックとバランス(XLR)のみ。わが家にあるプリアンプは4台ともバランス出力なしだから、モノラル標準ジャックを使うしかない。
 要するに、プリアンプの側はピン(RCA)プラグで、パワードスピーカーの側はモノラル標準プラグ。そういうケーブルがあれば、ダイレクトにつなげるわけだ。しかし、そんなケーブルふつう売られていないから、筆者はごくふつうのピンケーブル出口側に、ピンジャック→モノラル標準プラグのアダプター(audio-technica AT514CM)を差して、プリアンプとReveal 402を結ぶことにした。

 そうしたら、驚くほどあっけなく音が出た! そしてその瞬間「このプロジェクトは当たりだ」と直感。長いスピーカーケーブルを引きずり回したハイエンド・スピーカーではなかなか出せない、「ハキハキものを言うタイプ」の積極的な鳴りっぷりであったからだ。
 しかし、おおよそ1日鳴らすうち、不満も出てきた。ひとつは見た目の問題。といってもデザインうんぬんではなく、Reveal 402背面に突き刺したアダプターから、ピンケーブルが真下にたれ下がっているところだ。ケーブルがほぼ直角に曲がる。これはたとえ断線に至らなくても大問題。電子がいかにも通りにくそうだし!

 不満その2は音質の問題。
プリアンプ(試行錯誤の末、マックトンXX-550に決定)と結んだ直後は気にならなかったが、
○ もう少し低音の力感がほしい
○ 音色のグラデーションや情報量も今イチ
このあたりに不満が出てきた。
 こうなったら、スピーカー背面からだらりとケーブルを下に垂らす(線材のストレスを減らす)ため、L字型のモノラル標準フォンを自作するしかあるまい。その際、最適な線材を選べは、ほぼ思い通りの音になるのではないか。




 ミュージックバードの人気番組「オーディオ実験工房」みじんこ荒川さんに訊いてみると
「お薦めはズバリ、オヤイデ電気のTUNAMI TERZO V2です」とのこと。薦められた線材の​入口側​に​ピン(RCA)プラグ、出口側​に​L字型のモノラル標準フォンを​取り付け​、それでつないでみると​、​本当に「期待していた通りの音」が出てきた! 中高域~高域の刺激感がなく、中低域が程ほどにたくましく、分析的にならない程度の分解能。まさかここまで自分好みの音が出て来るとは――。アダプターを介さず、プラグと導体をきっちりハンダ付けしたことも、プラスに作用しているのだろう。




 プリアンプとパワードスピーカーを結ぶ
 TUNAMI TERZO V2



 とまあこのようなプロセスをへて、約半月間筆者はこのReveal 402だけを鳴らしている。
「何百万円もするハイエンド・スピーカー(ルーメンホワイト)を使わないなんてもったいない」
「28,000円のスピーカーからそんなよい音が出るわけない」
「10万円のスタンドに載せて、80万円もする管球式プリアンプで鳴らしているからだよ」
などなど様々なお声があろうと思うが、筆者はけっこうしあわせな気分。オーディオは何より自分ためにやっているのだから、これでいいのだ!

 お次は電源ケーブル(パワードスピーカーだから当然電源が要る)の交換、あるいはオーディオ専用分電盤からの極太線直差しなどを計画している。レゾナンス・チップfo.Q(フォック)などの貼りものも楽しそうだ。
 さあ、このスピーカーだけで、どこまで行けるか!? うまく行ったら、また報告させていただく。

(2016年4月20日更新) 第114回に戻る
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村井裕弥

村井裕弥(むらいひろや)

音楽之友社「ステレオ」、共同通信社「AUDIO BASIC」、音元出版「オーディオアクセサリー」で、ホンネを書きまくるオーディオ評論家。各種オーディオ・イベントでは講演も行っています。著書『これだ!オーディオ術』(青弓社)。

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