コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー

第16回/ぶらっと京都に行って来た







 先日、京都に行って来た。京都文化博物館別館ホールで、京都フィルが「室内楽コンサートシリーズ」を続けていて、7月のプログラムがやけに魅力的だから、これは何をおいても行かねばと思ったのだ。

○ ブリストン:トロンボーンとティンパニのための「会話」
○ 久石譲:四重奏曲 ト短調
○ R.シュトラウス:もう一人のティル・オイレンシュピーゲル(F.ハーゼンネール編)
○ J.S.バッハ:カンタータ第21番《わがうちに憂いは満ちぬ》より「ため息、涙、苦痛、悲しみ」 (ここから長富彩がゲスト参加)
○ ルクー:ピアノ四重奏曲

 いずれも佳作。そして好演。しかし、カンタータの伴奏をする長富彩を聴くのは、おそらくこれが最初で最後だろう。ルクーも、次に生で聴けるのはいつの日か。



京都フィル室内楽コンサートシリーズは
42回も続いているのだ







川床料理の名店「ひろや」と筆者


四条通周辺は、祇園祭の準備で大忙し

 翌日は、鞍馬を訪ね、山道を歩いて、貴船に抜けた。川床料理で有名なところだが、「ひろや」という繁盛店があったのにはびっくり!

 そして3日目、筆者はMさんというオーディオ愛好家のお宅を訪ねた。この方は、筆者と同じルーメンホワイトのスピーカーをお使いで、いわゆる「ルーメンホワイト仲間」なのだ。

 「それがどうした」といわれそうだが、JBL仲間、タンノイ仲間、B&W仲間はいても、ルーメンホワイト仲間は実に珍しい。筆者はルーメンホワイトを使い出して、もう10年半になるが、「僕も使っています」という人には一度も会ったことがない。そもそも何ペア輸入されたのかさえわからない。

 もう何年も前のことになるが、「誰か仲間はいないものか」と思って、ネット上でお仲間探しをしたら、運良くおひとり見つかって、以後こまめにその方のブログを拝見するようになった。そうしたら、そのブログのコメント欄にたまたまMさんが現れたのだ。

 その頃まだMさんはルーメンホワイト未購入で、「買いたい機種(ホワイトライト)はもう売られていない。どうしたものか」とお悩み中。そして「オーディオ評論家の村井裕弥さんが、いつの日かホワイトライトを手放す日が来たら、それを中古屋でゲットしたい」というようなことを書かれていて、大笑いしてしまった。それからしばらくして、ネット上のお付き合いが始まったと記憶している。

 Mさんはその後艱難辛苦の末、ご自宅から何百キロも離れた東北のショップで、ルーメンホワイトの新品(おそらく日本唯一の在庫)をゲットされ、それを「オーディオを第一に考えて設計した豪邸」で鳴らしていらっしゃる。こう書くと、良くも悪くもオーディオひと筋のようだが、うるわしき令夫人とウィーンに飛び、ブッフビンダーがベートーヴェンの協奏曲を弾き振りする瞬間に立ち会ったり、ダルカンジェロがタイトルロールを歌う《ドン・ジョヴァンニ》を堪能したり、とにかく探求心+向上心+実行力が服を着て歩いているような方なのだ。







 そんなMさんが、どんな音を出しているのか。大いに期待して聴かせてもらったのだが、河村尚子のSACD『夜想(ノットゥルノ)~ショパンの世界』が躍動感に満ちたカミソリ的キレキレ・サウンドで鳴り出したから、一瞬の内にKO負け! 
 このSACD、わが家では少々ホコリっぽい音で鳴るのだが、Mさんのお宅ではホコリのかけらも見つからないのだ。

○ 信じられないほど立ち上がりが急峻で
○ 解像度が群を抜いて高く
○ ワイドレンジ
○ ヌケのよさも驚異的

 かなりの大音量だというのに、鼓膜にやさしいというのもありがたい。また、「このSACDには、河村尚子らしさがあまり入っていない」と思い込んでいたのだが、こういう音で再生すると、生で何十回も聴いてきた彼女の魅力がそこかしこに転がっているではないか!?

 イダ・ヘンデルが08年の来日時に録音した『魂のシャコンヌ』に関しても、ほぼ同じようなことがいえる。わが家でかけるとやけに年季の入った音で、ヴァイオリンはヴィンテージというよりすすけた骨董品。それを老いた奏者が、残された命を振り絞って必死に弾いているようにしか聞こえない。しかし、Mさんのお宅で再生すると、楽器も奏者もやけに若返って、みずみずしく輝き出すのだ。CDはもちろん、イダ・ヘンデルに関する評価まで変わってしまいそうな再生音。


筆者が10年以上使い続ける
ルーメンホワイト「ホワイトライト」(右)


オーディオ的配慮に満ちた専用室。
強度・遮音性能・電源環境なども完璧だ。






河村尚子
『夜想(ノットゥルノ)~ショパンの世界』


イダ・ヘンデル『魂のシャコンヌ』



 昼食後は、
○ D/Aコンバーターとプリの間を結ぶケーブルを、あれこれ交換(村井的には、やはりオーディオFSKがベストバランス)
○ パワーアンプを導体式から管球式に交換
○ ケーブルからはずし忘れていたバインド線をはずしたり、また巻き付けたり
○ パワーアンプとスピーカーのつなぎ方を若干変更(ショップが推奨した方式を無視して、よりシンプルにつないでみる)
○ スピーカーケーブルを、パワーアンプのどこにつなぐか変更(8Ωのところにつないだり、16Ωのところにつないだり)
○ プリアンプのフロントパネルに付いていた樹脂製防護カバーをはずしたり、また付けたり

 こういった実験で共に盛り上がり、すこぶる充実した時間を過ごすことができた。偉そうな言い方に聞こえたら謝るしかないが、これらの実験を通して、Mさんの耳のよさ・センスのよさと「ただ高価な機器を買い揃えるだけの人ではないのだ」ということがわかって、たいそう嬉しかった。

 筆者はその日深夜に帰京し、翌朝から自宅システムを、根底から見直し。Mさんのお宅とまったく同じ音にしようとは思わないが、『夜想(ノットゥルノ)~ショパンの世界』や『魂のシャコンヌ』にあれだけの情報が入っているとわかった以上、何とかしたくなるのが人情だ。

 おおよそ2日間かけて(お金はまったくかけないで)、七転八倒。かなりよい線まで行けたと自負しているのだが、何をどうしたのかについてくわしく書き出すと、もう収拾がつかなくなってしまうので、今回はここまでとする。

 やはり、持つべきものは友。互いに刺激を与え合える友がいてこそ、オーディオは楽しいのだ!

(2013年7月22日更新) 第15回に戻る 第17回に進む 

【村井裕弥 出演イベント 2連発!】※イベントは終了しました
●マックトン十番勝負!第6回:管球式アンプ日英対決

日時/7月26日(金)19:00~20:30
場所/マックトン試聴室(西武新宿線・井荻駅から徒歩7分)地図
ゲスト試聴機/プリアンプ:EAR912 パワーアンプ:EAR861
予約/TEL:03-3394-0131(マックトン) 

●第1回 Acoustic Audio Forum/最新のDSDファイル対応ネットワークプレーヤーとその再生環境について
日時/7月28日(日)13:00~15:00、15:30~17:30
場所/アコースティックデザインシステム試聴室(千代田区九段北2-3-6 九段北二丁目ビル1階)
地図
ゲスト試聴機/スフォルツァートDSP-03
予約/TEL:090-8462-3021(フシグロ)

村井裕弥

村井裕弥(むらいひろや)

音楽之友社「ステレオ」、共同通信社「AUDIO BASIC」、音元出版「オーディオアクセサリー」で、ホンネを書きまくるオーディオ評論家。各種オーディオ・イベントでは講演も行っています。著書『これだ!オーディオ術』(青弓社)。

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