コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」
<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>
ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー
第26回/あらためて真空管アンプについて
お台場のタイム24ビルで10月の18日(金)~20日(日)まで開催されたオーディオ・ホームシアター展 2013。いわゆる音展。興味深かったのが、ミュージックバードの部屋で登場したブランドだ。まず、常設という形であったのがFALのスピーカーとヨシノ・トレーディングの扱っている製品。中でもディアパソンのスピーカーやEARのアンプ、CDプレーヤー類の存在感は高かった。村井裕哉さんがイベントで使ったマーク・レヴィンソンもあったが、イベント後は置いてあっただけなのは残念だった。自分も19日には番組の公開収録をさせてもらったのだが、その前の枠で行われていた寺島靖国さんの番組の収録では柳沢正史さんがゲスト。柳沢式真空管アンプの制作者である。 |
![]() 公開録音の模様。大橋慎さんを迎えて。 ![]() 自作派に熱狂的支持を受けるサンバレー。 |
音楽の音というのは大きな音の影に小さな音も複雑に鳴っているわけだが、その領域の再現性が高いのだ。オーディオモテギの茂木さんの言葉を引用させてもらえば「真空管アンプはディーゼルエンジン、トランジスタはガソリンエンジン」という表現になる。小音量(エンジンで言えば、低めの回転数)でのトルクがあるのだ。 |
![]() うちで使用しているサンバレー SV-2PP(2009)。845という大型の送信管を出力管に使っている。 |
ネガの部分も書いておくと、多量の熱を発生するので電気製品としての効率は悪い。また、夏場は暑い。真空管の寿命の短さを指摘される方もいるが、きちんと設計された真空管アンプの真空管の持ちは悪くない。10年、20年たって切れた場合、真空管を交換すれば修理できるというのはむしろメリットかもしれない。また、真空管の種類によって音の傾向が違うというのは、オーディオには「唯一絶対の正しい音」があると信じている方にとっては許しがたい部分と言われても仕方ない。これはもう価値観の問題だろう。実際に購入しようとして、その多様な音の製品から何を選ぶかというのもたしかに難しい(が、イベントで聴いて良かったら、それを買えばいいのだが)。小型化しにくいのも現代的ではない(が、モノとしての存在感に魅力を感じている人も多い)。
総じて言えば音は多様でいいものが多いが、省エネ性とか、コンパクトネスとか、デザインとか、今風に作るのはたしかに難しいジャンルではある。
真空管アンプ、いかがなものか。いや、間違えた(笑)。いかがですか。
(2013年10月31日更新) 第25回に戻る 第27回に進む
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