<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>
ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー
第56回/オーディオ評論家シリーズのこと [鈴木裕]
番組でオーディオ評論家、オーディオライターをゲストに招き、いろいろとしゃべってもらう企画がある。特に強い企画意図があってはじめたわけではないが、なかなか興味深い。僕にとっては先輩格の方が多いということもあるし、それぞれにオーディオや音楽に対するこだわりが強いからだ。今まで須藤一郎さん、林正儀さん、(そしてもうすぐ村井裕弥さん)を迎えている。
そもそもオーディオライターとかオーディオ評論家って何だろう。
僕自身が基本的に考えているのは「オーディオ機器についてある程度造詣が深く、機器類をテストしたり調べて客観的に伝える仕事。あるいはその使いこなしやセッティング能力が高く、なおかつオーディオという趣味性の高いものの良さを伝えたり、表現することができる能力を持った人」じゃないかと思っている。この中で特に記名性の高い仕事をする人をオーディオ評論家、と呼んでいるんじゃないだろうか。もっと言うと、ライターという言葉が主に書くことによって伝えるのに対し、評論家になるとイベントでしゃべったり、雑誌とは関係なくメーカーとの関係で機器の音質評価をしたりと、人格性も求められている気がする。
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鎌倉エフエム社長としての顔も持つ 須藤一郎さん(7月31日オンエア)
「オーディオ・ホームシアター展 」(10月17日~19日)にて公開録音!
詳しくはこちら
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「女子オーディオ」の活動にも熱心な 林正儀さん(8月14日オンエア)
林さんのメモ
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ただしこの「評論家」、オーディオというジャンル以外も含めてどうもイメージが芳しくない肩書きである。ひとつには「自称」の人が多いこと。ご本人はきちんと段階を踏んで仕事をされているのだろうが、申し訳ないがちょっと胡散臭い。
もうひとつは、たとえばクルマ関連で言うと自動車評論家に対して、モータージャーナリストや、クルマ生活ライターや、カーライフ・エッセイストや、交通ジャーナリストといったように、自己申告的な(悪く言うと、恣意的な)名称を語る場合が少なくないということもある。ナントカ評論家と付けておけば、とりあえず発言権があるような感じになるのかもしれない。それだけで発言権は生まれないと思うのだが。また、本人だけでなくそういう肩書を安易に与えしまうメディア側のやり方も問題だろう。
僕自身は番組では「ライターの鈴木裕です」と言っている。実際にオーディオ評論家とか先生と呼ばれたりすることもあるのだが、実態は番組で聴いている通りで、まだまだ上記のような(特に、人格の部分)要素が薄く「自称評論家」になりかねないからだ。また、「オーディオライターの」とも言わないのは、たしかに最近は書く仕事のほとんどはオーディオについてなのでそう言っても間違いないが、オートバイとかクルマとか自転車についても書いて来たし、今でも時々クルマ関連の仕事があったりしてスケジュールが合えば取材をこなすし、原稿も書いていたりするからだ。
ちなみに昨年、2枚目の名刺を作った。
長い間、たぶん20年間近く、 「WRITER/RADIO DIRECTOR」という肩書の名刺だったが、「audio critic」という名刺も持つようにした。ちなみに、criticは評論家とか批評家という意味。つまり、現在、2枚、持っている。ここでも複数の名刺を持っている人はどうも胡散臭いというイメージで、自分が該当してしまって忸怩たるところがあるのだが、これには事情がある。
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外国メーカーの外国人の技術者やCEOといった人たちにインタビューする機会がたぶん年に5回から10回くらいあって、その時にメーカーの人が、「ミスター・スズキ、オーディオ・クリティック」と紹介してくれているのに、名刺の方が「ライター/ラジオ・ディレクター」ではどうも辻褄が合わないからだ。紹介している人の顔に泥を塗ることになるし、相手の外国人だって名刺を見て、ラジオ・ディレクターって何のこっちゃと思っているに違いなかったのだ。
なんかどうでもいい話をダラダラと書いているようで恐縮しているが、そういう曖昧模糊として魑魅魍魎なオーディオ評論家って何だろうという疑問もあって、番組でシリーズ化しようと思ったのは間違いない。オーディオって音楽だが、オーディオ評論家っで何なのだろう、という話。何であれ、やはり現物にあたって取材する必要がある。
どれくらいブッキングできるかわからないが頑張っていきたい。
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格闘するオーディオ評論家!村井裕弥さん (9月11日オンエア)
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(2014年9月1日更新) 第55回に戻る 第57回に進む
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