コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー

第7回/パラボラ・アンテナを60センチ径の大型に替えると








オーディオ愛好家・高田敏夫さんのお宅を直撃!



高田邸の60㎝アンテナ

【動画】オーディオ愛好家のお宅訪問!

 45センチ径のパラボラ・アンテナを60センチ径の大型に替えると、ミュージックバードの音質がいちじるしく向上した(元はといえば、高田敏夫さんのお宅で起きたエピソード)。そのことについて初めてふれてから、いくばくかの時が経過した。
 もちろん、その後「そんなバカな!?」から「そんなの当たり前だろ」に至るまで、両極のご反響をちょうだいした。しかし、それらはすべて「体験したことないけど、俺はそう思う」という反応であって、その意味では、否定であろうと肯定であろうと、その実大差ない。どちら側に立とうと、それはただの憶測に過ぎない。

 あっ、そういえば偉そうなことを言っている筆者自身だって、実際45センチ径パラボラ・アンテナと60センチ径パラボラ・アンテナの聴き比べはしていないじゃないか!? まったく別の再生環境で、45センチと60センチを、それぞれ聴いているだけだ。それじゃ比較とは呼べない。
 ここはひとつ、自宅でその両方を聴き比べてみるしかなかろう。そこで、ミュージックバードの担当者に連絡して、「わが家での聴き比べが可能か否か」を問い合わせてみる。そうしたら、「ちょうど、村井さんのお宅に60センチを仮設して、検証をお願いしたいと思っていたのですよ」などという渡りに舟的な返事が返ってきた!

 アンテナ仮設当日、わが家に予想をはるかに超えて大きな宅配便が届いた。これが60センチ径のパラボラ・アンテナか。いかにもデカいな。もちろん、その大部分は緩衝材で、アンテナ本体がこのサイズなワケはないのだけれど…。
 そして、おおよそ2時間後、担当者もわが家に到着。「もう何百回同じことをやったかわからない」という熟練した手つきで、パラボラ・アンテナを段ボール箱から取り出す。そのあとは、正にチョチョイのチョイだ(60センチは、衛星からの電波をしっかり受け止められるから、その分、微調整が容易。さっとベスト角度が決まる)。

 その結果出てきた音だが、「ここまで違うのか」というのが正直な感想。言っちゃなんだが、わが家のチューナーは最も安価なチューナー(CDT-1AM)に光デジタル端子を付けたCDT-1AMD。それなのに、「チューナーを最高級モデル(Conclusion C-T1CS)に買い替えたのではないか」というような音が飛び出してきた。





 もう少しくわしく語ると、
○ 音像の存在感が明瞭。よりどっしりと構えて聞こえる。
 その分、音楽の語りかけも強くなる。
○ 刺激感、ノイズ感がほぼなくなる。「デジタル臭さ」が消えた(!)
 と断言してもよい。もちろん、即アナログの音になるわけはないが、
 その雰囲気をプンプン漂わせるようになった。
○ 音色・陰翳ともに、その濃さを増した。

 そうして約2週間、筆者はそのしあわせ感を満喫。しかし、別れは突然やってきた。「今週末、爆弾低気圧のおそれがあるから、仮設大型アンテナは吹き飛ばされる恐れ有り(もちろん、本格的に固定すれば、何の問題もないのだが)。今すぐ取り外しに行きます」という電話がかかって来たのだ。

 筆者は、担当者による60センチ径アンテナの取り外しを、窓越しにぼんやり眺めていた。ひたすらむなしい…。心の中を北風が通りすぎていくって、こんな感じ?
 また、45センチ径アンテナにつなぎ替えるだけだから、なんの労苦もない作業だと思っていたが、実際やってみるとこれが実にたいへん。つなぎ替え先の45センチ径アンテナを熟練者が動かしても、ベストな受信角度がなかなか決まらないのだ。見ているだけでイライラしてくる。アンテナを動かすのではなく、そこにドライバーを軽くあてるだけで、測定数値がコロコロ変動してしまうのだから。



村井宅で使用中の
光デジタルTOSリンク端子付きチューナー「CDT-1AMD」


今回取り付けた60㎝アンテナ CS-604S
※アンテナの径が大きく、風の影響を強く受ける為、専用の金具や設置場所の補強が必要となる場合があります。

 ご存じのリスナー様も多いと思われるが、この作業をおこなうとき、チューナーのフロント・ディスプレイには2つの値が表示される。右のふたケタは、この作業中キャッチした最も強い電波の値(それが即99に換算される)。それに対して左のふたケタは、現在キャッチしている電波の強さ。右の99に比べていくつにあたるかが表示される。理想的には、右も左も「99」が表示されてほしい!

 2週間前、60センチ径のパラボラ・アンテナを仮設するときは、その「左右とも99」にいともたやすく到達(さすがは熟練担当者)。しかし、それを45センチ径のパラボラにつなぎ替えると、99どころか、80もなかなか出ないのだ。担当者は、おおよそ20分間、ドライバーを片手に奮闘したが、ついに断念…。

 念のため断っておくが、筆者宅のベランダは真南向きで、となりビルの近接等もない。天空に向けて、スカッと空いている。それなのに、45センチ径のパラボラだと、ベストの角度に調整するのは至難のワザなのだ。

 そのあと、担当者とお茶しながら、放送を聴いた。できるだけ先入観を抱かないようにして聴いたつもりだ。それなのに・・・。
「デジタルの理屈から言うと、アンテナがデカかろうか小さかろうが、一定以上の強さで受かれば、音質に違いが出るワケないんですが、現実はこうですよね。わたくしも、最初高田敏夫様のお宅で経験するまではわからなかったんですが」

「今、45センチ径のアンテナを使っている人が、60センチ径にしようと思うと、いくらくらいかかるんですか?」
「片手くらい(約5万円)かかります。でも、それじゃハードルが高すぎるから、今なんとか安くできるよう努力している最中なんです」
「その交渉ごと、がんばってくださいよ。わが家のようなチューナーを使っていてもこれほど違うんだから、最高級チューナーをお使いのお宅だと、もっと違うんじゃないかなあ」

「わたくしもそう思います。リスナー様の中には、『放送がよく途切れる』『高いチューナーに買い買えたが、それだけの甲斐がない』等々様々なご不満をお持ちの方もいらっしゃるのですが、実はその大多数は、受信が正常におこなわれていないからじゃないかと思っているんです。しかし、こちらから『多少費用はかかりますが、そちら様にお伺いして、正しい受信がされているか点検した上で、ベストな状態にさせていただきます』と申し上げても、『それは困る』とおっしゃる方が多くいらっしゃる」

「そのお客様の心理わかりますよ。ボクもオーディオ始めた頃、メーカーや輸入商社が親切で言ってくれる『ご自宅チェック』が嫌で嫌でたまらなかったから。あと、プライバシーをのぞかれたくないという方もいらっしゃいますしね」







 Conclusion C-T1CS

 しかし、これはなかなか厄介な問題だ。局としては、きちんと番組作りをおこない、さまざまな気配りをして送信。チューナーの品質にも、この上なくこだわっている。しかし、アンテナを地元の業者さんやリスナー様ご自身が取り付けた場合、それがベストであるという保証はない(極端な話、最初がよくても、台風などで微妙に狂っている可能性だってある)。あなたのお宅も「一応途切れることなく受信できているだけ」で、クォリティ的には大きな損失を被っている可能性があるのだ。

 特に「最上級チューナーConclusion C-T1CSに買い替えたが、そのメリットをあまり感じない」という方。そういうお宅は、「チューナーの違いさえわからない程度の受信状態」である可能性が高い。もちろんただの思い過ごしである可能性もなくはないが、とりあえず局に、電話をかけ、「こういう状況なんだけど」と相談してみることをおすすめする。
(2013年4月23日更新) 第6回に戻る 第8回に進む

【イベント】マックトン十番勝負!第3回「オーディオ電源工事で、アンプの真価を引き出せ!」
※イベントは終了しました
 管球式アンプの老舗ブランド「マックトン」が毎月最終金曜、チャレンジ試聴会を開催しています(全10回)。
 4月のテーマは「オーディオ電源工事で、アンプの真価を引き出せ!」。オーディオ電源工事のスペシャリスト、島元澄夫氏(出水電器)においでいただき、皆様の前で、実際に簡易電源工事をやっていただきます。工事前と工事後で、音はどう変わるのか。あなたの耳で確かめられる、滅多にないチャンスです。休憩をはさんだ後半は、島元氏がプロデュースしたALLION T-200svが、マックトンのアニバーサリー・セパレートXX-550&MS-1500に挑戦します。

  日時/4月26日(金)19:00~20:30
  場所/マックトン試聴室(西武新宿線・井荻駅から徒歩7分)地図
  プロデュース・司会/村井裕弥
  予約/必ず事前にお電話でご予約ください。
     TEL:03-3394-0131(マックトン)
  ※満席で予約が取れなかったときは、翌日土曜日も試聴できるようにします(但し講演等はなし)。こちらも要予約。

村井裕弥

村井裕弥(むらいひろや)

音楽之友社「ステレオ」、共同通信社「AUDIO BASIC」、音元出版「オーディオアクセサリー」で、ホンネを書きまくるオーディオ評論家。各種オーディオ・イベントでは講演も行っています。著書『これだ!オーディオ術』(青弓社)。

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