コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー

第6回/銀座の高級寿司店で、ただで好き放題食べました




 「オレの音ミゾをほじっておくれ」に『THE BEATLES 10』を
リリースしたサージェント・ツゲイズ・オンリー・ワン・クラブ・バンドの告井延隆さんが出演してくれた。

 バンド名は仰々しいけど、これはビートルズ・ナンバーを生ギター1本で「いかに原曲のように聴こえるか」と挑戦する告井さんのソロ・プロジェクトだ。
 

 そりゃもちろん、彼らの音楽をギター1本でリアルに再現するのは物理的に不可能だ。しかし人間にはイマジネーションがある。告井さんは「こういう感じで弾けば、聴き手が原曲を彷彿する」というスイッチを知っている。
 そして伴奏しながらメロディーを弾くという超絶テクニックを駆使しているが、ただそれだけで、僕らは「そうだそうだ、この曲のおいしい感じは!」と膝を叩いたりはしない。告井さんは大きなビートルズ愛を抱いていて、それぞれの人が持っているそれぞれの愛がうまくシンクロするのである。

 この番組はアナログしかかけないので、新作CDは封印し、生で演奏してもらえた。
 告井さんは、だいたいの曲は頭のなかに残っているので、やったことがなくてもひねり出すことができるという。
「1曲目は、たったいまの気分で」とお願いすると、「じゃ、これやりますか」と始まった。

 手を伸ばせばギターに触れるほど近くで聴く実演は、まさに圧巻だった。
 だが途中でかなり重大なことに僕は気づいた。どうしてもこの曲名が出てこない。もし告井さんが当然知っているでしょとアナウンスしなければ、次の曲に進むわけにもいかないので「えーと、これなんという曲でしたっけ?」という誠にシラけた応対をすることになる。
 




 告井延孝さんがゲストの回は
 4月20日放送。


 「THE BEATLES 10」好評発売中!



 少ない脳細胞を総動員したがわからずじまいで、曲が終わって観念した瞬間に、告井さんが「ティル・ゼア・ウォズ・ユーでした」と紹介してくれギリギリのところで助かった。
 ちなみにこれは『ウィズ・ザ・ビートルズ』A面6曲目に収録されているメレディス・ウィルソンの曲だ。

  興味深かったのは、告井さんの実演解説だ。
 「タックスマン」でギターのイントロ、伴奏、メロディーなどをばらして少しずつ重ねていく過程を見せてくれた。指の動きよりはるかに多くの音が出てくる。相当すごいことをやっているかわかる。

 また「涙の乗車券」では、いかにもギターで演奏しているヴァージョンとバンドっぽいテイストを入れたものとの違い、
「シー・ラヴズ・ユー」ではメロディーにビートのバウンドを入れることの難しさなどを教えてくれた。
 いやはや無茶苦茶おもしろい。

 








 ごちそうさまでした!

 僕が番組内でリクエストした曲は、センチメンタルな旋律がたまらない「イフ・アイ・フェル」、後期のぐちゃぐちゃサイケな感じを、ギター1本で描く「アイム・ザ・ウォルラス」、告井さんの演奏を聴いて改めて本家ヴァージョンの素晴らしさを確認した「マザー・ネイジャーズ・サン」など。

 これは銀座の高級寿司屋で大将と対面し、好きなだけ握ってもらっているようなものだった。
 本当に極上の気分。もちろん、勘定はすべてミュージックバードという前提。
 どんだけ幸せだったかということですね。

(2013年4月10日更新) 第5回に戻る 第7回に進む

田中伊佐資

田中伊佐資(たなかいさし)

音楽出版社を経てフリーライターに。ジャズとその周辺音楽を聴きながら、オーディオ・チューニングにひたすら没頭中 。「ジャズライフ」「ジャズ批評」「月刊ステレオ」「オーディオアクセサリー」「analog」などにソフトとハードの両面を取り混ぜた視点で連載を執筆中。著作に「ぼくのオーディオ ジコマン開陳 ドスンと来るサウンドを求めて全国探訪」がある。

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