コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」
<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>
ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー
第79回/広島ASCが、ヴォーカルのワンポイント収録にチャレンジした [村井裕弥]
当連載第76回で、デノンPMA-50というデジタルアンプを取り上げた。そして、「そのアンプに搭載されているアンプデバイスDDFAを主役にした試聴会(3/7)のレポートはこちら」とリンク先の紹介もした。 | ![]() DENON PMA-50 |
このコラムがアップされるのは、音楽之友社の雑誌『Stereo』5月号発売直後か。筆者はその中で、CDT-3AFD(ミュージックバードの新チューナー)を取り上げている。「くわしくは5月号72ページを読んで」と書くしかないのだが、この新チューナーをわが家に迎え入れた結果、ミュージックバードを聴く時間が3割増しくらいになったことを強調しておこう。
もしお近くのオーディオショップで見かけたら、ぜひ他機種との聴き比べをおこなっていただきたい。5月号にも書いたが、これは従来のラインナップとはいささか血筋の異なる製品なので、すぐ違いに気付いていただけるはずだ。
勝手な予想だが、他機種との聴き比べをしたら、2人におひとりは買い換えを決意されるのではないか。それくらい、この新チューナーは出来がよい。
さて、ここからが今月の本題だ。あなたはアコースティックサウンドクラブ(以下ASCと表記)をご存じだろうか。広島市を中心に活動するオーディオ愛好家の団体だが、主な活動は、年1回の生録とそれを収録したCD-Rの配布。昨年からはDSDファイルの貸し出しもおこなっている。
この活動が始まってからすでに20年以上が経過したが、彼らはこうして生まれるチェック用ソフトのことを「確認音源」と呼んでいる。
新製品の購入を検討されるとき。あるいはご自宅のセッティング変更をされるとき、あなたは聴き慣れたCD(あるいはハイレゾ等)をご使用になるだろう。そして「ああ、よい音だ。この製品は当たりだ。購入しよう」とか「このセッティングに決めよう」と決断する。
しかし、後日別のCDをかけると、「あれっ? この製品ってこんな音だっけ」とか「こんなセッティングじゃ、音楽にひたれない」とかいうことが、よくあるのではないか。当たり前だ。「聴き慣れたCD」を使ってのオーディオ・チェックは、あくまでそのCDとの相性を見ただけであって、他のCDとの相性は保証されない。市販CDは、マスタリング・エンジニアのセンスで巧みに味付けされているから、そのエンジニアのセンスに合っているか否かしかわからないのだ。
だから、「実際どんな音で演奏されていたかわからないCD」「マスタリング・エンジニアが上手に味付けしてまとめたCD」では、オーディオ・チェックなどできない。これがASCの基本的な考えだ。
ASCの「確認音源」制作は、このあたりの問題点をクリアすべくスタート。
![]() 確認音源『土と水』
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○ 特製ワンポイント・ステレオマイクのみを使用 このようにして作られた「確認音源」の中には、『土と水』『14 YEARS AFTER』のように、市販されたものもいくつかある。特に『土と水』は人気で、ネットオークションなどに出ると、2万円くらいで売買される。それだけの価値を、多くの人たちが認めている証拠だろう。 |
そんなASCの「確認音源」収録、今年は4月12日(日)午後、広島市の『ミンガス』というジャズバーでおこなわれた。 ヴォーカル:田中玲子 先ほど書いたように、「どんな編成であろうと、ワンポイント・ステレオマイクだけで収録する」のがASC流。何年か前、藤井学さんの強烈なドラム(河村貴之『HARBOR WIND』)を収録したこともあったが、そのときは音の小さい楽器をマイクの近くに配置し、ドラムを遠くに離して見事にバランスを取った。 当日10時に集合し、10時半頃リハーサル開始。マイクセッティングとレベル調整は、おおよそ30分で完了。ヴォーカリストの口元とマイクの距離は29センチに決まった。 |
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![]() 自らのピアノ演奏が鮮明かつナチュラルに録られていることに驚く折重由美子さん |
今年はDSD 2.8MHzとDSD 5.6MHz、2台のレコーダーを使用したが、音のよさはもちろん「2.8MHzと5.6MHzの違い」にも皆びっくり!(ミュージシャンの側からも「こんなにも違うんですか」「ここまでリアルに収録されちゃうんだ。CDとは全然違いますね」と声が漏れた)。 (2015年4月20日更新) 第78回に戻る 第80回に進む |