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コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー


第102回/電源トランスとMCトランスのダブル・トランス効力を身をもって味わった11月 [田中伊佐資]

●11月×日/「音ミゾ」でビリー・ジョエル・コレクターのソリアーノ・タナカさんにゲスト出演してもらう。60年代のビリーを聴かせてもらったたが、ブレイクしてからのイメージとはかなり違って、意外にもハードロックをやっていたのは面白かった。
 しかし最も驚愕したのは、タナカさんはビリーの大ヒット曲「素顔のままで」(『ストレンジャー』収録)で聴けるフェンダー・ローズの現物そのものを所有していることだった。ビリー・ジョエル記念館ができたら寄贈しないといけない。
 なぜビリーが手放して、どうやってタナカさんが手に入れたか、価格がいくらだたのかは放送を聴いてのお楽しみ‥‥とお決まりのフレーズで締めようと思ったら、もう放送は終わっていたのですね。

 ●11月×日/ステレオ時代の取材で朝霞にあるホンダアクセス開発部へ。ホンダ車の純正ナビ「Gathers(ギャザズ)」の専用音響チューニング「音の匠」を聴き牧野茂雄さんと対談をするという内容。カーオーディオについては門外漢ながら、音を聴く勘どころはやっぱり同じ。そして最新の音を聴いているうちに、20代の頃、カーオーディオを良くしようとそれなりにがんばっていたことを思い出した。
 当時、車を買うのが精一杯だったため、始めはカーオーディオが無くラジカセを持ち込んでいた。それは牧野さんも同様だったらしく、やたら倒れるし、カセットを取り替えるのは運転中は至難だしと話は盛り上がる。
 音はどうしようもなかったけど、いま思うとあれはあれで楽しかった。


ソリアーノ・タナカさん(左)が出演した「音ミゾ」(11月29日・12月6日放送)
「素顔のままで」を収録した『ストレンジャー』

オーディオ用アース工事中

 ●11月×日/出水電器の島元さんに、自宅のアース工事をしてもらう。
 ぼくはオーディオ誌で「アースっていいぞ」と吹聴しているわりには、10年前にアース棒30本を打ってもらって、それ以上のことはしていなかった。うちの庭は地盤が固いらしく、打ち込みは結構たいへんなのでそのままになっていたのだ。
 でも島元さんが、中部電力が認めたという素材(ステンレス?)のアース棒と接地抵抗軽減剤を試してみたいというので実験台になることにした。
 それら新型の10本を打ち、その隣りにいままで通りの銅の棒を10本打ち、それぞれつなげてみて抵抗値や音を比べてみるということだった。抵抗値は新型の方が数オームだけだが低い。まさかと思ったが微妙に音も違う。新型はシャキッと切れ味がある。プラシーボによるバイアスがかかっているのかと思ったが、ニュアンスが異なっていた。

 そして最後は両方を連結させ、従来のアースと合体。合計50本となる。抵抗値は10Ω強から7Ωまで下がった。背景の静寂感が高まり、音は浮き上がるようにして押し出しがよくなる。
 出水電器は電源アイソレーション・トランスを作っていて、その日、容量が200WのCT-0.2をコストダウンしたプロトタイプを借りる。これは製品版と中味はほぼ同じで、堅牢な特注ボディではなく市販のケースに収めてみたとのこと。音のグレードはやや下がるもの価格は安くなる。お客さんはどっちをとりますかねと試作してみたらしい。
 これはA/B比較テストをしたわけではないの、どっちがどうとはいえないが、このトランスも効いた。電源ノイズを減退させると、音はストレスがなくなる。萎縮せずに堂々とする。
 そういえば、うちでは台所でレンジを使うとたちまち音が悪くなる。電源ノイズは本当に侮れない。

●11月×日/アコースティック・リバイブの石黒さんが伊勢崎にあるアライラボのMCトランスを持ってくる。
 信じられないほど強烈な力でMCカートリッジを奮起させることに唖然。肝は巻き線にPC-TripleCを使うなど贅を尽くした材料、そしてカートリッジの内部インピーダンスを完全にマッチングさせたことだ。
 使っているライラのタイタンが、潜在能力がまだこんなにあったのかとパワーアップ。マイソニックラボに至っては、そのへんのトランスでは実力の半分も出ていなかったことを知る。
 まあしかし、トランスは手巻きで月産2~3台ということもあり、1台軽く100万円超えという価格にもなかなかのインパクトあった。ぼくなんか年末ジャンボ頼みだけど、マイソニック愛用者はそんなこと言っていられないだろうなあ。


アライラボの超弩級MCトランス
(2015年12月10日更新) 第101回に戻る 第103回に進む 

【祝!コラム100回記念インタビュー】
 ミュージックバード出演中のオーディオ評論家3名による当コラムは2013年から始まり、おかげさまで100回を超えました。 毎回、日常の音楽やオーディオをめぐって日記形式で書いてくださっているのは、田中伊佐資さん。

――このコラムの〆切と、他の雑誌社さんの〆切とかぶってるようで・・・毎月お忙しいところありがとうございます。
田中「こちらこそ、〆切守らなくてゴメンなさいね。まあでも関根さんのおかげで、ギリギリ掲載は間に合っている。そういう問題じゃないか。他のお2人はちゃんと守ってるのかなあ」

――日記形式のコラムですが、いい感じで肩の力が抜けていて、クスっと笑えるところもあったりして。楽しく読ませていただいてます。
田中「肩に力を入れて日記なんて書かないから、あんなもんですね。月に一回、記憶に残っていることだけを断片的に書くというのは楽でいいです」

――ところで最近はアンティークを集めているとか。
田中「昔からなんとなく好きだったんですけど、ヴィンテージ・プレーヤーを手に入れて、50~60年代にプレスされたレコードとかが良くなってくると、気持ちがそっちにいきますね。いかにも由緒がありそうなガラクタを安く買うかがポイントです」


田中伊佐資さん。スタジオにて。

最近、野外マーケットで買ったアンティークの置物
ちなみに、伊佐資さんと私はご近所さん。
「××公園の花見がそろそろですね」「あそこの回転寿司、よく行きます」など、もっぱら会話の中心は地元の話(笑)。音楽や文学など、独特の文化が根付く中央線沿線。この街で生まれ育った伊佐資さんは、その文化を”学んできた”というよりは、身近なものとして”感じてきた”といったところでしょうか。だからこそ『人を楽しませたい』という根底の想いを、自然に文章として表現することができるのかもしれません。

引き続き番組もコラムもどうぞよろしくお願いします!(担当:関根)
田中伊佐資

田中伊佐資(たなかいさし)

音楽出版社を経てフリーライターに。「ジャズライフ」「ジャズ批評」「月刊ステレオ」「オーディオアクセサリー」「analog」などにソフトとハードの両面を取り混ぜた視点で連載を執筆中。著作に「オーディオ風土記」(DU BOOKS)「ぼくのオーディオ ジコマン開陳 ドスンと来るサウンドを求めて全国探訪」(SPACE SHOWER BOOKS)がある。

  • アナログ・サウンド大爆発!~オレの音ミゾをほじっておくれ
  • ジャズ・サウンド大爆発!~オレのはらわたをエグっておくれ
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