コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

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第262回/2020年上半期のアタリ盤を振り買った6月[田中伊佐資]

●6月×日/ちょうど1年前の本コラムでは「2019年上半期、アタリ盤とハズレ盤」を書いていて、今年もやってみるかとレコ棚をモソモソと探してみた。

 ここ1、2年はモノラル専用ヴィンテージ・システムが勢力を伸ばし、モノ盤ばかり買っていたがようやくそれが鈍化した傾向にある。

 古い機器は50~60年代にプレスしたレコードの音がやはりマッチしていて、必然的にそれはオリジナル盤になる。となるとそれらは無闇に高価なので、財政的にへばってきたのが実情だ。
 今年に入ってからネット動画や雑誌などのレコ買い企画の仕事が多めで、空前のペースでレコードを入手していたが、コロナの影響でそういう企画はどこかに吹っ飛んでしまい、個人的にも店へ出かけるのは自粛ムードで、増加枚数は急激にスローダウンした。
 オークションもしきりに覗くが、僕の肌感覚では以前落札できていた価格よりも高騰気味で、店で買えなきゃ誰もがネットで買おうとするだろうから必然的な成り行きかもしれない。
 ということでレコ買い企画で入手したものは横に置いておいて、自腹盤でこれはアタリと思ったのは次の3枚(買った順)。








●Cosmic Partners/Michael Nesmith & Red Rhodes
 元モンキーズのマイク・ネスミスが73年にサンタモニカのギターショップに併設するイベントスペースで録音した未発表ライヴ。カントリー系のポップなロックで、このあたりの音楽を僕は特に好んで聴いているわけではない。しかし曲や演奏が良いのはもちろんとして、フィーチャーされるペダルスチールの音がたまんなくいい。あとは発掘されたテープから復刻のためか、肉厚な音質も大きな魅力。MCが長かったりして冗漫な部分もあるが、そんなことはもはやどうでもいい。



左からMichael Nesmith & Red Rhodesの『Cosmic Partners』、『Eric Dolphy At The Five Spot Vol.2』、Joni Mitchellの『Shine』

●Eric Dolphy At The Five Spot Vol.2
 ドルフィーがファイブ・スポットで録音したライヴは『Vol.1』『Memorial Album』(事実上のVol.3)は持っている。Vol.2だけがずっと欠けていて、なんとなく気持ち悪かった。といってもどこをどう探しても見かけないといった珍しいものでもない。高くてなかなか手が出なかった。
 モノラルのオリジナル盤だと2万円以上はするだろう。なんとか4ケタで手に入らないかと虫のいいこと考えつつ、ずっと気にかけていた。
 eBayを巡回していると、安いスタートで程度がまあまあの盤を見つける。ただし発送先はアメリカ国内のみが条件。そこでセカイモンを利用し15%の手数料を考えて入札したところ、運よくあまり競わず落札。為替の関係で1万419円と5ケタになったがまあこれはラッキーだ。それにしてもやっぱり凄まじかった、この演奏と音は。

●Shine/Joni Mitchell
 ジョニ・ミッチェルを聴いていると片面の最後のほうで微妙に飽きてくる。しかしジョニは嫌いじゃない。むしろ結構よく聴く。個人的な嗜好としては、まるでカルボナーラに近いアーチストなのだが、この『Shine』は、激ウマ讃岐うどんのごとく汁までいけた。
 CDが2007年に出たときまったく気にしていなかった。今年ようやく初めてLPになったので聴いてみたのだが、ポップでありながら自由気儘な音の作りが心にしみじみ響いた。キャリア40年で到達した独特の境地を聴く盤。
 なおカッティングはバーニー・グランドマン。相変わらず、この人の音は盤石の安定感がある。

●6月×日/カバンに入れて持ち歩いていたペットボトルのキャップがしっかりしまっておらず、気づいたら中が水浸しになって、長いこと使っていた携帯が不通になった。
 近い将来ガラケーは廃止になるらしいので、仕方なくスマホに切り替えた。携帯会社にうまく取り込まれた感はあるが、僕が細々と続けているツイッターが、どこでもできるという意味で身近になった。








オーディオテクニカのVMカートリッジを連続で試聴


 僕がツイッターを始めたのは2011年4月からだ。これはコルグのAudioGateというソフトを無料ダウンロードするときにツイッターのアカウント取得が必要で、仕方なく従っただけだ。
 確かオーディオ記事執筆のために、自宅のパソコンでハイレゾを再生する必要があったと記憶している。いまは「ハイレゾ非対応筆者」の烙印を編集者から背中にがっつり押されているので、そんな依頼はまったくないが、いつも暇そうにしているためか、僕の思惑に関係なくそんな仕事が舞い込むことが昔はあった。
 そのツイッターはもともとやる気がないので、それから6年間ほど放っておいた。正確には忘れていた。


 ところが何かの弾みで、永久凍土のような自分のツイートに飛んだことがあり、見たらフォロワーが9人いた。いま思えば、たまたま見つけてフォローしてくれて、その人も忘れてそのまんまになっていたのだろう。
 この人たちはもしかして僕がなにかをつぶやくことをじっと待っているかもしれないと無邪気な思いが募って、ちょっとやってみるかとなった。編集者やカメラマンにどうなんだろうねえと尋ねるとSNSはなにかやっておくと人とつながりができていいですよと言う。
 あなたのツイッターを見ましたので取材させてくださいとか言うもんかなあと疑念がないこともなかったが、とにかく始めてみることにした。
 内容はレコードとオーディオのことに絞った。ダイレクトに同好の士とつながったほうがいい。せっかくなら自著や雑誌の予告宣伝ができればいい。
 出版物が出る前にネットへ書いてしまうのはどうなんだろうかと編集者に尋ねると、ああ構いませんよと誰もがいたって鷹揚だ。僕レベルのツイッターでどこまで販促につながるかは定かでないが、知らないものを買ってくれと懇願しても売れるわけないから、そこは構わず記していこうと思う。

 そんなことで最新の予告としては、8月19日売りstereo誌9月号で「80年代アナログ爛熟期のオーディオテクニカVMカートリッジを聴く(仮題)」をヴィニジャンでやります。最高だった機種名はさすがにここで発表しませんが。

(2020年7月20日更新)

 

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田中伊佐資

田中伊佐資(たなかいさし)

東京都生まれ。音楽雑誌の編集者を経てフリーライターに。近著は『ヴィニジャン レコード・オーディオの私的な壺』(音楽之友社)。ほか『ジャズと喫茶とオーディオ』『音の見える部屋 オーディオと在る人』『オーディオそしてレコード ずるずるベッタリ、その物欲記』(同)、『僕が選んだ「いい音ジャズ」201枚』(DU BOOKS)、『オーディオ風土記』(同)、監修作に『新宿ピットインの50年』(河出書房新社)などがある。
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