コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー


第33回/吉野さんのガラード301購入計画で盛り上がった12月

●12月×日/10月にジークレフ音響のウェルフロートボードをスピーカーの下に入れて、予想以上の雄大な鳴りっぷりにシメシメと喜んでいたのだが、音像のフォーカスをもうちょい軽く締めたくなってきた。どこをどうするかはいろんな方策があるのだろうけど、アンダンテラルゴのスルーホール・スパイクを試してみることにした。これはナットの形状をしたスパイクで、代表の鈴木良さんによると中心が空洞になっていることが絶大なミソになっているという。空洞部分の大きさによって音は変わり、商品化に当たってさんざんいろんなサイズを試したらしい。
 そういう蘊蓄は大事だが、実はアリオンのパワーアンプを買うときに、シャーシへM8ネジの穴を特別に切ってもらっていて、それがぴったりはまることが、ぼくには装着への強烈な動機になっていた。
 始めは高域用のアンプに付けると、ちょっとおとなしくなったようでガックリ来たのだが、よく調べるとこの製品は工作精度が非常に高く、アンプは4本脚ということもあって、思いっきり押すと微かなガタがあった。注意深く調整すると、音は急激に元気が出て、フォーカスがきゅっと締まった。オーディオ・システムに、ウェルフロートボードという飴を与えつつ、スルーホール・スパイクという鞭を打ったという結果が出て、この作戦は大成功。さっそく低域用のアンプにも鞭打つことにした。

●12月×日/「音ミゾ」の収録。ゲストは「THE FAB FOUR ARCHIVES」という私設ビートルズ資料館の学芸員こと館長の野口淳さん。プロモ・シングルなど稀少盤を持ってきていただき、貴重な音をオンエア。
 ところでぼくにとってビートルズ最大の関心事は、どの国のどのプレスがいい音なのかということに尽きる。英国オリジナル盤が最高という説は確かに正しいが、意表を突いた国に凄い音の盤が潜んでいるのではないかという疑念はある。


アンダンテラルゴのスルーホール・スパイク


『マジカル・ミステリー・ツアー』のドイツ盤

 曲がかかっている間に野口さんに根掘り葉掘り訊ねてみると『マジカル・ミステリー・ツアー』はDMM(ダイレクト・メタル・マスター)カッティングのドイツ盤がいいと教えてもらった。そしてなんとそのわずか2日後に新宿のディスクユニオンで当該盤を発見。確かに音は豊潤そのもので「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」のストリングスは聴いたことがないほどの厚みがあった。ビートルズは掘っても掘ってもネタが尽きない。


秋葉原の「オーディオMotegi」店内


小林幹彦さんのパラゴンとアルテックA5

●12月×日/先月に続いて、Stereo編集部吉野俊介さんのガラード301購入計画を進めようと秋葉原の「オーディオMotegi」に行く。店主の茂木邦宏さんは301が大好きみたいで「音は太くて力強いよ」なんて話を聞いていると、ぼくまで欲しくなってくる。オン・オフや回転調整のレバーをガシャガシャやると、内部パーツがいかにもメカという感じで動く。吉野さんは、「たまんないっす」とすぐにでも持ち帰りたい様子だが、なにせレコードに散財する男なので先立つものがない。安価なジャンク品を探して、それを直して使おうという魂胆だった。

●12月×日/Stereo誌の表紙写真を撮っている小林幹彦さんの自宅へ行く。吉野さんも同行。小林さんは301を持っていて、なんなら譲ってもいいという情報を得た。
 ピカピカの極上品。キャビネットはオーディオMotegiオリジナルの積層バーチ合板、さらにアーム(SME3012R)が付く。もちろん価格もそれなりにする。財布と相談するまでもなく、吉野さんはここでもがっくり肩を落とす。
 小林さんのJBLパラゴンで、浅川マキのファースト『浅川マキの世界』を聴く。声の存在感が圧倒的。深く胸に染みこむ。ヴォーカルものはパラゴンの独擅場だ。やっぱアナログだよねとシンプルな結論を3人は共有する。

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田中伊佐資

田中伊佐資(たなかいさし)

音楽出版社を経てフリーライターに。ジャズとその周辺音楽を聴きながら、オーディオ・チューニングにひたすら没頭中 。「ジャズライフ」「ジャズ批評」「月刊ステレオ」「オーディオアクセサリー」「analog」などにソフトとハードの両面を取り混ぜた視点で連載を執筆中。著作に「ぼくのオーディオ ジコマン開陳 ドスンと来るサウンドを求めて全国探訪」がある。

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