コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」

<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>

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第217回/新番組「すみません、お宅のオーディオ、ナマ録させてください」の収録が始まった3月[田中伊佐資]

●3月×日/2012年の夏から続いた「アナログ・サウンド大爆発!~オレの音ミゾをほじっておくれ」はこの3月でいったんシーズン1が終了。


 のべ180人近いレコード好きのゲストに出演していただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。


 それで、シーズン2を来年あたりに始める前、オーディオ・マニア宅やオーディオ店、ジャズ喫茶などにうかがい、トークはもちろんその場の再生音をそのままナマ録してしまう新番組「すみません、お宅のオーディオ、ナマ録させてください」が4月から始まる。





 オーディオの音を録音すれば音が変わり、さらにそれを放送すればまた変わる。元の音とかなり違うだろうという指摘はあるだろうけど、そんなスクエアなことを言っていたら、面識のある人しかマニア宅の音は聴けない。おおよそ音の片鱗がわかればもうそれでいいのだ。

 その第1回は東中野の吉田一廣さんの家に決めた。そういえばステレオ誌の「音の見える部屋」も「音ミゾ」も吉田さんで始まった。僕にとって一番男だ。


 これは吉田さんの温厚な性格が大きい。初回の、ややもすると不安定な雰囲気になりがちな状況でなんとなく安心して進められる気持ちにさせる。もちろんオーディオが一級品で、のびのびと鳴らしきっている音も大きな要因になっている。



吉田一廣さんの地下リスニングルームで再生音を収録中




 この日も胸のすく爆音ロック全開だった。『ツェッペリンII』プロモ盤の「胸いっぱいの愛を」から始まる。音圧がすごくて、レコーダーの録音レベルは限界を超えているかも。こういうどっかりした中低音は僕も出せるものなら出してみたいと思う。まあ無理でしょうけども。

 ところでこの番組は、訪問前にイントロダクション的なコメント、訪問後に音の感想などを入れることになっている。ディレクターのこだわりで、街の喧噪が入ったほうが臨場感を出せると敢えて路上でぶらつきながら喋る。

 そのマイクの大きさがヤマザキのコッペパン(ジャム&マーガリン)くらいでかいので、通りがかりの人は、こいつ売れないTVレポーターかみたいな目でこちらをなんとなくチラッと見る。


 こっちは「ジョン・ボーナムのバスドラがスゴい」とかマイクに向かって(その人にとっては)わけがわからんことを話しながら歩いていくわけだから、たぶん変なオッサンと思っているにちがいない。






横浜・長者町のジャズ喫茶「シェルター・ピープル」はヴィンテージ・ジョインからスピーカーとプレーヤーを購入

 さて2つ目は総武線に乗って3駅目、代々木で降りて「ヴィンテージ・ジョイン」に向かう。店主のキヨトマモルさんが、やはりこの4月から新番組「オーディオ・ケ・セラ・セラ」を担当する。そのための宣伝を兼ねてといった政治的背景はまったくなく、僕はただこの店のスタンスが好き。

 重厚長大&高額ではなく、独自のコンパクト&スタイリッシュ・オーディオを打ち出している。

 「うちはドッカン系ではないよ」とスピーカーはヨーロッパのフルレンジ・ユニットをインストールしたものが並んでいる。モノラル・オーディオにも力を入れている。


 アンドレス・セゴビアのギターをしみじみと聴く。じわっと胸に染み込んでくる。







 ハイエンドオーディオ・ファンがたまに来店することがあり、物足りない顔をして帰っていくそうだ。確かにドッカンとは来ないけど、音楽がキュンと来る。音楽に対する想像力をかきたてる音。いいとか悪いとかではなく、音に対する捉え方が皆さんそれぞれだ。

 そういえば、横浜の長者町で一昨年暮れにオープンしたジャズ喫茶「シェルター・ピープル」はここヴィンテージ・ジョインのスピーカー(東ドイツのシュルツ製20cmフルレンジ)を使っている。座席はカウンターのみ。5人で満員となるミニマムな店だが、いい音でヨーロッパの10インチ盤、EP盤を専門に鳴らす。


 ということで、ここで無理ヤリ話を持っていくが、そんなキャラが立つジャズ喫茶やジャズバーの取材をまとめたムックが5月25日に音楽之友社から出ます。

 タイトルは「ジャズと喫茶とオーディオ」。店主の半生や割と知られていない店のオーディオ話が満載です。次回、またしつこく宣伝します。



ジャズと喫茶とオーディオ」田中伊佐資 著
音楽之友社から2019年5月25日に発売。定価2160円

(2019年4月19日更新)

 

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田中伊佐資

田中伊佐資(たなかいさし)

東京都生まれ。音楽雑誌編集者を経てフリーライターに。現在「ステレオ」「オーディオアクセサリー」「analog」「ジャズ批評」などに連載を執筆中。著作に『音の見える部屋 オーディオと在る人』(音楽之友社)、『僕が選んだ「いい音ジャズ」201枚』(DU BOOKS)、『オーディオ風土記』(同)、『オーディオそしてレコード ずるずるベッタリ、その物欲記』(音楽之友社)、監修作に『新宿ピットインの50年』(河出書房新社)などがある。
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