<雑誌に書かせてもらえない、ここだけのオーディオ・トピックス>
ミュージックバード出演中の3名のオーディオ評論家が綴るオーディオ的視点コラム! バックナンバー
第54回/Head Shell Records発足。かっちょいいレーベル・ロゴが欲しくなった7月 [田中伊佐資]
センチメンタル・シティ・ロマンスの デビュー盤。中央の赤い英字がバンドのロゴ
磯田秀人さん(左)ゲストの回は 8月16日・23日オンエア。
|
●7月×日/音ミゾのゲストは音楽プロデューサーの磯田秀人さん。CBSソニーに在籍していた時代にシカゴの『ライヴ・イン・ジャパン』やサンタナの『ロータスの伝説』を放ち、外国人ミュージシャンによる日本でのライヴ盤を世界的に格上げした人だ。
邦楽へ移ってからはセンチメンタル・シティ・ロマンスや四人囃子を手掛ける。十代の頃に熱中したレコードの、そのプロデューサーからレコーディングこぼれ話を聴けるのは不思議な気がした。
内容がよいのは言うに及ばず、プロデューサーの力量がためされるのはアートワークだ。特にセンチメンタル・シティ・ロマンスのデビュー盤ジャケットは心から傑作だと思う。見ただけでカラッとした西海岸のロックをイメージできるし、聴いてみたいなと思わせる。そして聴いた人はジャケットからサウンドを感じとることができる。
その核になっているのがバンドの英字ロゴ。美しい均衡を保った絵画といってもいい。彼らはバンドを結成して40年経つがいまだにこのロゴを使っている。
そんな話で盛り上がったら、すぐにまさかの方向へ進展する。
●7月×日/いろんな弾みがあって、ディスクユニオンから音楽レーベルを立ち上げることになり、イサシ・レコードでは冴えないので、名称はHead Shell Recordsに決める。思えば格好つけすぎや妙ちくりんな名前など、ここに至るまでいろいろな候補が挙がっては消えを繰り返し、それを列記するのは別の機会に譲るとして、ともかくこれに決まった。
Head Shellはもちろんレコードのカートリッジを装着する部分のことだが、Head(頭)はともかく、なんでShell(貝)なんだろうとずっと思っていた。電気的、メカ的なオーディオ機器のなかに貝という生物が出てくるのは違和感がある。そこがちょっとおもしろい。
|
そのロゴマークは、友達のイラストレーターかデザイナーに頼もうと思っていた矢先、磯田さんに会って、そういえばと思った。
「センチメンタル・シティ・ロマンスのロゴを作った方はいまどうしていますか」
「彼はCBSにいたデザイナーで、その後独立して、もちろんいまでもやっているよ」
「(レーベルについて説明して)ロゴをお願いできませんかね」
「それは得意技だからきっと喜んでやってくれるよ」
●7月×日/磯田さんが紹介してくれたタイポグラフィカル・デザイナーの吉田修一さんに会う。その前にサンプル作品集を送ってもらって拝見すると、マイルスの『アガルタ』のジャケットに載っているマークなど音楽関連はもとより、企業のロゴなどもあり完全にギャラが折り合わないことを覚悟。
「ロゴのポイントは貝で、その造形をどこかに入れたい。いずれTシャツを作りたい。レーベルに関係なくTシャツとして着たいと思えるような、かっちょいいものがいい」と吉田さんへ勝手なことを開き直ってさんざん言うとおもしろがってくれ、快く引き受けてもらえた。
●7月×日/11月の日記でクリアオーディオのリニアトラッキング・アームTT-3を買うと宣言して半年以上経過。ようやくジャンクから蘇生させたテクニクスのSP-10MK3にのっける。アームベースをうまく作りさえすれば、さほど難しい話ではない。しかし工作精度が求められるので、とても自分では手に負えない。スピーカーを作ってもらったウッドウイルに作ってもらうことにする。
●7月×日/ちょうどアームベースが出来上がったタイミングで、ヨシノトレーディングの壁谷幹善さんが来訪。というか蒲郡から納品のため上京するというので、ついでに寄ってもらった。最終調整をしてもらい、持参したクリアオーディオのタリズマンというMCカートリッジを聴く。全部があらわになる丸見えスッポンポンの音に全身がシビレ、カートリッジまで欲しくなる。
(2014年8月11日更新) 第53回に戻る 第55回に進む
|
|
リニアトラッキング・アームTT-3のためのアームベース(左)。右は試作品
TT-3を載せたSP-10MK3
|
お持ちの機器との接続方法
コラム「ミュージックバードってオーディオだ!」バックナンバー